あなたは私のはじめての人
幼馴染の家に遊びに来ていた私は、思いを寄せる幼馴染の彼に、つい別の人に告白されたことを話してしまった。紆余曲折のうち、思いが通じ合った私たちは、初めて身体を重ねる。
「同じサークルの人に告白されたの」
こんなことを幼馴染に言って、どうしたいのか、どうしてほしいのか、自分でもよくわからなかった。
は?と一瞬、優は固まって、戯れつく手を止めた。
「はは……ウケんじゃん。返事は、したわけ?……おっけー、したの?」
そいつと付き合うの?と優は、私の肩を掴んで問う。
それもいいかもしれない、とは考えた。
肝心の私の好きな人はいつまで経っても、私のことを幼馴染で友達としか扱ってくれない。可愛く思われようと、どんなにおしゃれやメイクを頑張っても。
こんな報告をしたのは、少しでも優に意識してもらえたら、という魂胆があったのかもしれない。
どちらにせよ、サークルの人とは付き合えない。サークル内は恋愛禁止だし、好きでもない人となんて、やっぱり無理だろう。
優に、こんなこと言ってごめん、と謝ろうとしたとき、不意に肩を押された。拍子に、ベッドがギシギシとしなる。
優が覆いかぶさってきて初めて、自分は押し倒されたのだと気づいた。
手首をガシッと掴まれる。視界が狭くなる。狭い視界の端に映った優の顔は、口内で潰した苦虫を堪えるような表情を浮かべていた。
その表情を見たのは一瞬で、優はすぐに顔を俯かせたので、その後には彼のつむじしか見えなくなった。
「優ちゃん?」
名前を呼ぶと、優は辛そうな顔をして私を見た。何か言いたげに口をパクパクと動かしたが、声は発さず、すぐ口を閉じた。
「優ちゃん、大丈夫?」
そう、聞くと優は掴んでいた手首を離して、肘を折って、身を屈めた。
「……嫌だったら、突き飛ばして」
そう言って、浅く唇を重ねた。
小鳥のさえずりのようなリップ音がちゅっと鳴って、名残惜しく唇が離れた。
私を見つめる瞳が熱い。そうやっていつも答えを私に言わせようとして、本当にずるい人。
「……なにそれ、先に言うことがあるんじゃない……?」
ちょっと意地悪げに優の胸を押す。
優は何度も、ごめん、ごめんと繰り返した。そう繰り返して、自分の胸に当てられた私の右手を握りしめた。
「ごめん、あず。梓、あなたが好きです。そいつの告白を受けないで。おれと、付き合ってください」
情けなく肩を下げて、優は自分勝手なお願いを口にする。
情けなくて身勝手で、およそカッコイイとはほど遠い。なのに、こんなにも嬉しく感じている自分がいる。
つくづく拗らせていると思う。
私は上体を起こして、優に口付けた。優が驚いた顔をしてたじろぐ。それを見て思わず笑みが溢れてしまう。
「私……私も好きだよ。ずっと優が好きだった。ずっと好きだったよ……」
そう言うと、優は花がほころぶように微笑んだ。
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