酔った先輩を家まで送ったら……

・作

会社の飲み会の帰り道。いつも面倒見のいい先輩が酔っぱらってしまい、家まで送ることに。酔って少しふわふわしている先輩を可愛いな、なんて思いながらベッドに寝かせて帰ろうと思ったその時、腕を引かれる気配がして……

「ほら、だから言ったじゃないですか~!飲みすぎたらダメだって!」

「あはは、唯ちゃんあったかいね~」

「ああ、もう~!」

会社の飲み会の後、酔っぱらった瑞樹先輩を前にして私は途方に暮れていた。

 

いたずら好きで、けれど面倒見のいい瑞樹先輩。そんな彼の唯一の欠点は、飲み会のたびにいつも飲みすぎてしまうところだ。

結局家が近い私が送っていくことになるんだから、ちょっとは私の身にもなってほしい。

男の人に肩貸して歩くのって、結構な重労働なのに。

 

「は~い、つきましたよ~」

「ん~……」

「はあ……もう、しっかりしてくださいよ」

私は先輩の手から鍵をもらってドアを開けてあげる。

覚束ない足取りが心配で、寝室まで肩を貸して一緒に歩いてあげて。……よし、帰ろう。

私はベッドの上ですやすや眠る先輩の寝顔を眺め、思わずほほえんだ。

「先輩、かわいいなあ」

「んー、そう?」

「え」

ヤバい、聞こえてた……!?そう思って口をおさえたのも束の間、彼はさっきまでのが嘘みたいにぱちりと目を開けてベッドから起き上がった。

そして私をまっすぐに見つめてニッコリとほほえむ。

「本当に、酔っぱらってたと思ってた?」

「え、あ……その……?」

「あれ、演技だよ~。送ってくれる唯ちゃんが可愛くて、つい」

ごめんね、と悪びれる様子もなく言う彼。いたずらっ子みたいに無邪気に笑う彼は、やっぱり全然酔ってるようには見えなくて。……ああ、だまされた。

「気をつけた方がいいよ、唯ちゃん隙だらけなんだもん」

「はい……気をつけます……って、え?」

さっさと帰ろうと背中を向けた時、彼に腕を引っ張られてそのままベッドに沈んでしまう。

 

理解が追いつかない私は、ただ先輩を見上げることしかできなくて。

先輩は私に覆いかぶさりながら、いつものように優しくほほえむ。

「唯ちゃんさ、俺のこと好きでしょ?」

「なんで……?」

「だってさ、好きでもない男を家まで送って、わざわざ部屋まで運んだりなんてしないでしょ?」

「うぅ、確かに……」

……どうやらバレていたみたいだ。

「それで、部屋まできたってことはさ」

「え、ちょ、まって……!」

「こうなってもいい、ってこと?」

でしょ?なんて言われたら断れるわけもなく。

だんだんと近づいてくる先輩の顔を避けることもできないまま、私はキスを受け入れた。

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