断ることができない性格の私…気軽に始めた「なんでも屋さん」は…危険がいっぱいでした (Page 2)
「こ、こんにちわぁ。メルです」
インターホンのカメラを覗き込みながら、笑顔を作った。
待ち合わせは、大学から電車一本の高級住宅地に建つ圭くんの自宅。
圭くんって、お金持ちの子だったんだ。
この辺の住民に関わることは一生ないだろうと思っていたから、私はもうすでに腰が引けている。
「どうぞ」
インターホンから声がして、大げさに門が開く。
私は呆然としながら夢と現実のはざまにいるような気分で中へ進んだ。
「いらっしゃい、どうぞあがって」
白くてほわほわのマルプーを胸に抱いて、圭くんはスリッパを出してくれた。
「ありがとう。凄いね、私こんな家はじめて入った」
「そう?(笑)今日は僕と、このコしかいないから、ゆっくりしてってよ」
ワンちゃんをなでながら圭くんはかわいらしく笑う。
わぁ、やったぁ!
なんて言いそうになったけど、今日は依頼で来ていることを思い出し、声をあげるのをやめた。
そっとワンちゃんを床におろし、圭くんが二階へ上がる。
その後ろを慌てて追いかけた。
たどり着いた部屋は、私のワンルームの部屋が3つくらい入る圭くんの部屋だった。
私を中へ招いた後、後ろでカチャリとドアの鍵を閉めたのが分かり、一瞬にして緊張が走る。
ちらりと圭くんの顔を盗み見ると、みたことのない冷笑を浮かべていた。
「あの…圭くん?ご依頼は、2時間の服従ってことで…間違いないですか?」
「うん、間違いないよ」
いつもの屈託のない笑顔で言う。
「服従って、何をするの?危険なこととか、健康を損なうようなことは、できるだけやめてほしいな…」
「ふふ、できるだけやめて欲しいって(笑)さすがイエスマン同盟の相方だけあるね」
彼が笑うのに合わせて笑ってはみせたが、私の中の不安はじわじわと大きくなっていた。
「そんな不安な顔しないで大丈夫だよ。君が嫌がることはしないつもり。僕がそんなことすると思ってるの?心外だなぁ…」
最後の方は、まるで子犬がクーンと鳴くようにつぶやいた。
「だ、だよね?よかった」
それにしても、この緊張感は何?部屋に二人きりというだけで、空気が張りつめている。
「じゃあ、早速だけどそこのベッドに横になって」
え?ベッドに?
私が固まっていると、彼がベッドサイドまで手を引いた。
「どうしたの?あ、いきなりでびっくりしてる?」
彼は腕についた高そうな時計を見やり、言った。
「じゃあ、始めようか」
これは仕事だ。
彼の世界観を壊してはいけない気がして、なるだけ彼の望むようにと務めた。
私は彼の前にひざまずき、彼が私の顎を持ち上げた。
「今から二時間、メルは僕に服従して。いいね」
「はい」
シュルルっと彼がポケットから細長い布を取り出し目隠しをした。
視界がふさがれたまま肩を押され、ベッドへ横たえられる。
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