勘違いな片思い (Page 3)

「んえ?」

「久保先輩、ヘンな声…」

芝崎はケタケタ笑いながら、ビールをごくごく飲んだ。

「ここ前に来たことあるの覚えてます?サイコロステ―…」

「芝崎、お前さ女性として、どうかしてんじゃないのか?」

「…え?」

やば、言いかたキツかったかな…でも言わせてもらう。

「彼氏に失礼だと思わないのか?俺だって男だぞ?」

ビールを飲んで、ドンッと音を鳴らしジョッキを置いた。

「彼氏?」

「隣のビルの会社に、彼氏いるって…おい、大丈夫か?」

芝崎はビールを吹き出して笑いながら、クリアボードを拭いた。

「誰が言ったんですか?久保先輩こそ、隣のビルの会社に彼女いるって聞きましたけど?」

今度は、俺がビールを吹き出した。

「いないよ。お前とふたりきりだったら、俺、帰るわ(くそ、くそくそー、玉山ゆるさん!)」

「久保先輩…」

「仕事の相談だったら話聞くけど、今度な(ムリ無理。髪型もなんか違うし、服も着替えたのかなんか…全然ムリ)」

なんだよ、なんでそんな顔して俺のこと見るんだよ…。

「彼氏…いないです」

「そうなのか…。あ、俺、今年いっぱいで仕事辞めるんだ。だから芝崎…」

「え?!」

「おい、大丈夫か?」

「はい!」

泣いてんじゃん…やっぱ、まだひとりじゃ仕事不安か。

「ほれ。返さなくていいから」

「…ハンカチくらい、私も持ってます」

なに怒って泣いて…まさか、俺のことで泣いてんの?

違う違う、期待すんな。

「結構、噂になってるらしいぞ、俺が辞めるの」

「…トイレ行って来ます」

やばい、気の利いたことなんも言えなかった…。

泣くとか思わないじゃ…なんで芝崎、泣いてんだよ?

期待させることすんなよな…帰って来るの、早っ。

「使ってないですけど、ハンカチは洗って返します」

「いいよ。あのさ…なんで泣いてんの?(心臓バクつく…)」

「…久保先輩がいるから辞めるの我慢できたんです。なのに…」

そんな目で見るなって。

あー!もう我慢できねー!砕け散ってやる。

「俺さ、芝崎のこと…ひとりの女性として意識してんだよ」

「え、だって…彼女…」

「さっきいないって言ったろ?ちゃんと聞いとけ」

なんで、顔真っ赤なんだよ…可愛いって罪深いな。

「仕事中、久保先輩のこと、ずっと前から男性として見てて…すいませんでした!」

芝崎は立ち上がって頭を下げている。

俺のこと、男性として見てた?

「芝崎…髪すごい似合ってる」

「…ありがとうございます」

見たことない可愛い顔して微笑むな。

「店、出よう」

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