勘違いな片思い
俺の後輩の芝崎トモ。なんなんだよ最近、可愛くなって…隣のビルに彼氏いるって聞いたな。芝崎に誘われたから普段行かない飲み会に来たら、仕事のときと全然違う。それに、ふたりしかいねーじゃん!「久保先輩のこと、ずっと前から男性として見てて…すいませんでした!」わかった…俺もう我慢できないからな…。
休憩室で、ふたりになるの避けてたのに…やばい緊張してきた。
「久保先輩、いつもお弁当なんですか?」
「え?あぁ…食材が傷みそうだったから」
おいおい、そんなキラキラした目で見るなよ、頼むから。
芝崎トモ。
俺の後輩で、最近いやにキレイになって、仕事のミスも格段に減った。
俺の片思いの相手。
「久保先輩、仕事もできて、料理もできるなんて…」
「ひとり暮らしだから簡単な料理くらいする…(なんで、ため息ついてんだよ)」
芝崎が食べてんのって…近くのフードトラックのテイクアウトか。
「いいんですか?」
「野菜、少なすぎ。自炊したほうが、なにかと便利だぞ?(芝崎が作った料理ならなんでも食いたい)」
ただレンジでチンした人参を、芝崎が食べてる白いパックに放り込んだ。
「美味しいです!」
「…なんも味つけてないのに。芝崎、料理しないの?」
「しますよ?」
するんじゃん…あ、彼氏にか…。
鼻歌歌いながら、俺が放り込んだ人参を嬉しそうに食べてる。
…くっそ、めちゃくちゃ可愛いじゃん。
「久保先輩、早食いは健康に良くないですよ?」
「仕事残ってるから(お前がいるから緊張して食べれないんだよ)」
俺の気持ち分かんないのか?…まったく、チクショー。
「人参、ご馳走さまでした!」
「お、おう…」
はぁ…可愛いなぁ。
数か月前まで仕事のミスが多くて参ってたのに、飲み会してから変わったなぁ…。
まさか玉山?…別名、人たらし。
玉山だったら、男女、先輩後輩、関係なくモテるもんな…仕方ない。
あー!そんなこと考えても無駄だぞ俺!仕事するぞ、仕事!
って…先週から芝崎、俺の隣なんだよな…とにかく、ミスしないように気を付けろ俺。
*****
「あの、久保先輩…」
「どうした?」
「この資料なんですけど…」
芝崎…前と香りが違う。
新しい彼氏か?
「久保先輩?」
「すまん。ここ間違えてるぞ」
「ありがとうございます」
…口ぐせの『すいませんでした!』じゃない。
「謝らないのか?」
「指摘してもらって謝るのって、久保先輩に失礼だと思いまして…」
「最近、変わったな?(俺を見ながら微笑むな)」
『すいませんでしたは、相手に失礼だろ?』って俺が言ったこと覚えてんのかな…ダメだ、自惚れんな。
「久保先輩の指導のおかげです」
「おだてても、なにも出ないぞー?(出したいけど彼氏いるんだろ?)」
「おだててないです。本心です」
後輩育成ナンバー1と言われてる俺としたことが、職場の後輩好きになるなんて。
もうここ辞めるのに。
レビューを書く