君をいじめたい、ずっと、ずっと… (Page 2)
「ねえ、僕はお酒飲まないし、一緒にご飯でも食べない?たくさん愚痴ったらすっきりして、お家に帰る気もわいてくるかもよ?」
わわ。誘われてしまった。
でも、この人は私が既婚者だと知ってるし、あくまでご飯とおしゃべりだけだし。
ほんの少し悩んだが、OKした。
偶然近い場所に住んでいるようなので、実家から2駅のところで待ち合わせした。
*****
久しぶりにきちんとメイクをして出た。
こんなドキドキ感はもう何年ぶりだろう。
待ち合わせ場所に近づくと、相手はもう着いていた。
遠目で見た限りでは、高身長でイケメンの雰囲気だ。
「お待たせしてごめんなさい」
軽くお辞儀をして顔を上げると、絶句した。
「……!桜井…義彦!?」
「…島崎…美冬?」
二人はしばらく固まっていた。
桜井は、小学校と中学校の同級生だった。
私は奴にしょっちゅういじられて、泣かされていた。
高校でようやく離れられて、せいせいしたものだ。
「なんでアンタがここにいるのよ」
「お前こそ」
「だってチャットの相手が桜井だって知らないから」
「俺だってだよ」
二人はしばらく睨みあっていたが、ふいに笑いだした。
「すごい偶然だな。しかも島崎、全然変わってない!」
「桜井もそのまんま。相変わらずイジワルそう」
彼は爆笑した。
「オシャレなイタリアンなんて考えてたけど、気軽にファミレスでも行くか?」
私はうなずいた。
*****
食事の後、私たちはドリンクバーで盛り上がっていた。
「チビとか泣き虫とかさんざん言われて…ホントいやだったんだから。でももうチビじゃないもんね~だ」
私はわざとイジワルっぽく言った。
「ゴメンゴメン…もうチビじゃない、立派に女性だよな。でも泣き虫は相変わらずなんじゃない?」
図星だった。
旦那にはいっぱい泣かされて、実家に帰ってきたのだ。
「俺イジワルだったよな、本当にごめんな。でも、島崎のことしかいじめたことないんだよ?」
桜井はコーヒーを飲みながら、照れたように笑った。
私は思わずその顔を見つめた。
彼は真顔になった。
「小学生のときから、ず~っと島崎が好きだったから。でもどうしていいかわからなくてさ。男ってホント馬鹿だよな」
突然の告白に、私は戸惑った。
ずっと、桜井はイジワルでイヤな奴だと思っていた。
でも、なぜか嫌いだと思ったことは一度もなかった。
「出よう」
桜井は私の腕をつかんだ。
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