隣に夫がいるのに…!
愛と誠は新婚カップル。そこへ久しぶりに義兄の洋一が訪ねてくるという。愛想なしの洋一が苦手な愛はしぶしぶ出迎える。ところが酒に酔った誠は眠りこけてしまう。初めて洋一と二人きりになった愛に、彼は意外な一面を見せてきて…!
「今週末さ、兄貴が出張で上京するって」
風呂上がりの夫、誠が髪を拭きながら言った。
「そうなの?どこに泊まるの?」
嫌な予感を覚えながら尋ねる私。
「ホテルを取るって言うから、『水くさいな、うちに泊まれば』って言っといた」
予感は的中。
「な~んだよ、そんな顔して。愛はホント昔から兄貴が嫌いだよな」
「嫌いじゃないよ。お兄さんが私を嫌いなんだよ」
「そんなことないって、人見知りするタイプなんだよ」
甘え声で言ってみる。
「まだ新婚だからさ、誠と二人でいたいんだよね~」
気をよくした彼は笑いながら、
「半年も経ってるのに?まあ俺もそうだけどさ。とにかく適当にもてなして?ね?」
そう言って私の頬に軽くキスをすると、リビングに行ってしまった。
あのお兄さんをうちに招くなんて…。
誠ったら本当に勝手なんだから。
*****
誠とは同期入社で、お互いすぐに恋に落ちた。
笑顔が素敵で話上手な彼とは、一緒にいて楽しく、リラックスすることができた。
二年交際した後に結婚話が出て、初めて彼の実家に挨拶に行った。
気さくな母親、シャイだけど人のよさそうな父親。
うまくやっていけそうな気がして、嬉しくなった。
初めての顔合わせとは思えないくらい、楽しい団らんのひとときだった。
そう、四歳年上の兄、洋一が帰宅するまでは。
「今夜いらっしゃるって話したでしょ?誠の彼女さん、愛さんよ」
母親が手まねきしたのに、洋一はこちらをチラっと見ると、
「いらっしゃい。残業続きで疲れてるから、俺、風呂入って寝るわ」
と、行ってしまったのだ。
一同は固まり、気まずい空気が流れた。
「イヤだわ、あの子ったら、照れてるのよ」
焦った母親はなんとか取り繕おうとしたけれど、私は深く傷ついた。
私の何かが気に入らなかったのだろうか…。
全部良かった
全部最高好き
鈴木 さん 2022年7月20日