忘れられない恋の行方は (Page 3)

「あ…!」

そうだ。思い出した。

先輩が卒業する数日前…。

友人から先輩との関係について聞かれた時があった。

その時の私は、毎日連絡を取っていたけれど先輩からどう思われているかも分からなかったし、両思いだという自信がなかった。

恥ずかしさもあって、友人には「確かに先輩は特別な人だけど…。向こうもどう思ってるか分からないし、私は何とも思っていない」なんて嘘をついてしまったのだった。

まさかその会話を本人に聞かれてしまっていたなんて…。

だから先輩は卒業後、私と距離を置いたんだ…。

「違うんです!あの時は私も幼くて…。自信がなくてああいう風に言っちゃったんです…」

「自信がなくて?あんなに毎日連絡取ってて俺が花純ちゃんに対して何も思ってなかったと思う?」

「でも…。ちゃんと気持ちは言われてなかったから…」

「つまり君は俺のことを好きでいてくれたってことでいいの?」

「はい…」

でももう7年前のことだ。

その7年間で私にも恋人が居たし、同じように先輩にも居ただろう。

私にとって先輩は今でも忘れられない存在だが、先輩にとってはどうか分からない…。

すると先輩は突然、路肩に車を停めたかと思うと、目を手で覆い痛がり始めた。

「いたたた…」

そういえば先輩は眼科に来ていた。

何の症状で来たのかまでは把握していないが、そのせいで急に痛みが出たのだろうか。

私は咄嗟にシートベルトを外し、先輩の目を覗き込むために近寄った。

「先輩、大丈夫ですか!?見せてくださ…んっ…」

近付いた瞬間、先輩は私の腕を引っ張って、キスをしてきた。

先輩からふんわりと柑橘系の爽やかな香りが漂ってくる。

「先輩ってば…!目は大丈夫なんですか?」

「あれは嘘だよ。キスがしたかっただけ」

「もう!先輩ってば!」

私は真面目に心配したのが馬鹿らしくなり、先輩の体を軽く叩こうとするが、先輩はその手首を掴むと再びキスをしてきた。

「んっ…もぅ…!」

「このままホテルに行きたいって言ったら嫌いになる…?」

いつもは凛々しい目をしている先輩が弱々しく見つめてくる。

その姿はまるで叱られるのを怖がっている小さな子供のようだ。

「嫌いになるわけないじゃないですか。だって、ずっと好きだったんですよ…?」

「俺もだよ…。忘れた日はない」

先輩は私から体を離すと、再びエンジンをかけて車を走らせた。

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