隠された存在

・作

交通事故で最愛の夫を亡くした私は、1人で娘を育てるために必死で生きている。事故の日から1年後、私は偶然にも夫の双子の兄に出会う。しかし夫の口から聞いたことが無かった兄弟の存在。昔話を聞くために双子の兄と再び会うことにしたが、なぜ夫がその存在を隠したかったのか家に行ってから分かるのだった…。

昨年の秋、私は最愛の夫を亡くした。

それはあまりにも突然の出来事だった…。

あの日から1年が経とうとしているが、私は未だにその事実を受け入れられずにいる。

旦那は何か病気を患っていた訳では無い。

ただいつものように仕事を終え、我が家へ帰ろうとしていた時、飲酒運転の車に巻き込まれてしまったのだ。

まだまだ一緒に娘の成長を見届けたかったのに…。

もっと一緒にしたいこともあったのに…。

私は大きな喪失感を抱えながらも、まだ小さい娘のために頑張って毎日を生きていた…。

*****

「ほら美玖!もうお家に帰るよ!」

平日は私も仕事をしているし、娘は幼稚園へ通っているため、なかなか一緒にゆっくり過ごすことが出来ない。

だから今日は少し離れたショッピングモールへ2人で買い物に来たのだった。

しかし帰ろうとしても、娘の美玖が嫌がって、少し離れたところに座り込んでしまったのだ。

あまり来ない場所だからだろうか…。

「もうお母さん1人で帰っちゃうからね!」

私はわざとらしく娘に背を向けて歩き出した。

すると焦った娘が急いで立ち上がり、こちらへ向かって走ってくる。

その時…。

ドンッ

「あっ!ごめんなさい…!」

なんていうことだろうか。

娘が走り出した瞬間、通り過ぎようとした男性にぶつかってしまった…。

私は咄嗟に娘の元へ駆け寄り、その男性に向かって謝罪をする。

「大丈夫ですよ。むしろ娘さんは大丈夫でしたか?」

私は男性の優しい声掛けに一安心し、顔を上げる。

「え…?」

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