身勝手な束縛 (Page 2)

あれからどうやって自席に戻ったのかさえ覚えていない。何だか周りが賑やかだけど気にしてられない。

「ああそうか、今日は金曜日。約束…」

(そうだ。早く退社しないと、城くんが来ちゃう)

週末、行きつけのバーに行く約束していた。

でも。週末にこそ彼女とかと会うんじゃないの?どうして私なんかといるの?疑問ばかりが渦巻いて雅貴が来たことに気付かなかった。

「…!」

「ちょっと話しがある」

有無を言わさず腕を取られ連れてこられたのは、雅貴と会社で会うといえばここ非常階段。出来れば二度と足を踏み入れたくない場所だった。

「何、いきなりこんな所に連れてきて。話があるならここじゃなくてもいいで…」

「なぁ、やり直そうぜ」

私の言葉を端折ってまで、言いたかった事がそれ?

「さっきの女、連れて歩くにはいいんだけどさ。…あの相性が良くなくてさ」

「!」

黙っているのをいい事に聞いてもないことをペラペラと。それに女を何だと思ってるの!

悔しいし、いろんな感情がぐちゃぐちゃで思わず上がった腕を簡単に取られ、反対にバランスを崩し雅貴の腕の中に閉じ込められた。

「ごめ…」

「なあ、みほ。…いいよな?」

これが私が大好きだった人。

「私、今恥ずかしい」

「え?」

「…あなたみたいな男を好きになった、自分が」

「!」

ガッと力任せに体を剥がされて、絡まる目は怒気を含んでいて、思わずぶたれると目を瞑りそうになった瞬間、二人の間を割って影をつくる城くんの背中。

「彼女を。女をバカにするな!」

「お前には関係ねえだろ!オレは今みほと話してんだよ」

「大橋さん俺、彼女なんていませんから。みほさんの気持ちが自分にないからって、勝手なこと言わないでください。それに…」

「え…どう言う…」

少しだけ見えた雅貴の顔色は、薄暗い場所でも怯えてるように見えて、背中越しに聞く城くんの声は静かに呻くよう。

「もうみほさんは俺のものなんで。気安く触らないでください」

「っ…」

すっと私に手を差し出し連れ出してくれた。もう雅貴も追いかけては来なかった。

*****

「ちょ、ちょっと…恥ずかしいよ、みんな見てる…それに会社は恋愛禁止だし、その…」

城くんは何も言わず、片時も私の手を解こうとしない。でもそれが、嬉しいなんて。

先行く背中に問いかける。
私、城くんに好きだと伝えてもいい?

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