身勝手な束縛
社内恋愛禁止ならしない方がいい。まして、取っかえ引っかえ別れてはすぐ新しい女を作り、さらにそれを見せつけてくる男なんて。そんな歯がゆさを紛らわせてくれるのは会社の後輩、城之内だけ。みほ本人は気付かない、後輩の想いを気付き邪魔をするのは…誰?
「毎度のことだからいいんだけどさー」
ぷはぁ〜と色気もそっちのけでこうやって、恋愛の愚痴を会社の人で言える子は、後輩の城之内くんだけ。
「城くんだけだよ〜愚痴、言えるのは。何でだろ〜ね!?」
「…鈍感が」
「ん?何か言った〜?」
「ハイハイ、ナニモイッテオリマセン」
「ムッ、ならいいんだけどー」
社内恋愛禁止なこの職場で、雅貴との密会を見られてから始まった、週一の愚痴大会。って言っても私の愚痴を聞いてもらうばかりなんだけど。
社内1、2を争うくらいのモテ男の雅貴との付き合いは一筋縄ではいかず、3週間に1度のペースで浮気に悩んでいて、最近ついに別れることになった。
「…そろそろ限界。ですよ、みほさん?」
「…すぅ…」
「って。やっぱり寝てしまったか」
*****
「またやってしまった…いつもの事とはいえ…」
どんなにバーで酔いつぶれても、翌朝は必ず自分のベッドに寝ている。
城之内くんには本当に感謝していて、ダメな所もちゃんと指摘してくれるから、週明けまでには必ず頑張ろうと思わせてくれる。
「でも…城くんだと何でこんなに自分をさらけ出せるんだろう」
ボーッとする頭で考えても答えは出ず、再び眠りの世界へ。
そんなみほに、城之内の気持ちを知る由もない。
城之内が、みほの瞳を隠す前髪に触れ、優しい眼差しを向けてることに。理性を総動員して耐えていることに。
ったく…
*****
翌日
(雅貴…)
私の視線に気付いた雅貴はほくそ笑み、雅貴と隣にいるストレートな艶髪が印象的な彼女は、まるで私など眼中にないほどスマートに目の前を通り過ぎる。
軽く見つめあった二人に、もう私が入り込む隙などなくて、そして雅貴は言う。
「なぁ、みほ、お前誰でもイイわけ?」
「え」
雅貴がもう何を言っても責める気などなかった、たとえそれが理不尽な言い訳でも。
でもあとに続く言葉は、自分で自分を殴りたいほどに打ちのめされた。
「城之内と会ってるらしいけどさ、あいつ女いるし…」
「…女?」
まだ何か言葉が続いてた気もするけど、それ以上、私の耳には何も入ってこなかった。
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