唇が暴くカラダのウソ (Page 2)
唇をゆっくりと離す。
「いいの?」
「うん」
壁いっぱいの窓の向こうは夜景。
バーを出て向かったのはこの港町にそびえ立つ有名ホテルで、停泊している船のライトアップまで綺麗に見える。
ちゅ、ちゅ、とキスを繰り返していた慎二さんの手がするりと下りていくのにドキッとした。
「あっ」
「なあに?」
「あの…えーと」
緊張しながら慎二さんの腕に手を添えた。
「私、あんまり得意じゃない、と思う」
ゆっくり間を置いて、何が?と首を傾げられた。
「その…うまく気持ちよくなりにくいというか」
笑ってみせたけど慎二さんは真顔だった。
「あっ、でもちゃんとできることはできるのよ。大人の淑女だしね?…あはは」
「…」
滑ったわ。
まずい。まずいわ。ええと。
「だからつまりその、私の方が反応が鈍くても大丈夫よってことなので…あまり気にしないで欲しいの」
慎二さんはまだ神妙な顔をして私のことを見下ろしていた。
ああだめだ。まだ空気が最悪だわ。どうしよう。
だけどどうしても防衛線を張っておきたかった。
前の彼には私のコレが原因で浮気されたから。
私自身イくという感覚が分からない。イったこともない。今まで一度も。
セックスはできるけどイき方が分からない私に、彼は色々な道具とかをベッドに持ち込んだけど、結局一度も思い通りにはなれなかった。
挙句若い子と浮気して、お前だって悪いだろ、と。私に言い残して去った。
以来ずっと誰ともこういう風になれてない。
自分も相手も傷つくのはもうゴメンだって、そう思ってた。
だけどこの人なら、慎二さんとなら、もしかしたらと考えてしまった。
スッと慎二さんが私の手を取った。
「今日はやめておこうか、結衣さん」
ズキンッと胸に激しい痛みが走る。
「…うん、そうだね」
やばい泣きそう。だめ。我慢しろ…!
ぐっと唇を噛み締めた瞬間、ふわりと抱きしめられた。
レビューを書く