毎週金曜日、バーにいる推しメンと濃厚えっち (Page 2)
私が“彼”を初めて見かけたのは、行きつけになりつつある都心のバーである。
仕事終わりでも、気軽に飲めそうな場所を探して辿り着いた店で、十人がけの大きめなバーカウンターの他にテーブル席もある、落ち着いた雰囲気が気に入った。
狭すぎるバーだと、常連同士で顔見知りになったりして、ちょっと入りづらかったりするのだが、わりと客層が広いらしいこのバーでは、そういった心配も少ない。
何度か通ううちに多少の顔見知りはできたけど、たまに世間話をする程度だ。
大抵は一人でゆったり飲んで、ほろ酔いで帰る。
そんな日常が少しだけ変わったのは、彼を見つけてしまってからだ。
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仕事に支障を来さないで飲める日、となると、やはり金曜日か土曜日になるのだが、考えはみんな同じだ。
出遅れてしまうと満席で入れないこともあるので、静かに落ち着いて飲みたい私は、あえて休前日などは外しがちだった。
満席ともなると、やはりどうしてもそれなりに賑やかになるし、他のお客さんのことを気にして、なんとなく落ち着かないで飲むことになるからである。
とはいえ、定時で上がれたら話は変わってくる。
バーが混むのは、終電の少し前からというのが定番だからだ。
その日は仕事の切りも良く、私は退社するなり意気揚々とバーに向かった。
しがない経理なので決算期などの繁忙期以外は、なんだかんだいいつつ結構定時で上がれることも多い。
職場と自宅は二駅の距離で、バーは職場側の駅が最寄りだが、駅から少し離れているので、職場の人間とかち合ったこともない。
まだ日も暮れきらない夕方の、開店直後のバーにその人はいた。
「ありゃ、俺の貸し切りかと思ったのに」
お店の奥から声をかけられ、私の身体はすくみ上がった。
マスターとは何度か話しているが、マスターよりも少し高い声だ。
反射的に声の主を探すと、カウンターに腰掛けたサラリーマンが、にこにこと笑っていた。
「七地(ななち)、お客さんを驚かすんじゃない。――いらっしゃいませ、お一人ですか?」
カウンターの中にいたらしいマスターが、サラリーマンをたしなめる。
口ぶり的に知り合いなのだろう。
驚いたせいもあるが、私は“七地”さんからなかなか目が離せなかった。
なんというか、その…すごく好みの身体をしてたからである。
逆三角形の引き締まった腰と、大きな背中。
ジャケットを脱いでいるおかげで窺(うかが)い知れる、程よく筋肉が付いていそうな腕。
細マッチョというヤツだ。
二十五になったばかりの私とそう年齢が変わらなさそうな彼は、以来、私の隠れたウォッチ対象となったのである。
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