陽炎が揺らめく夏の日に
幼馴染の4人組の中でカップルになるも、互いのパートナーに振られてしまった真奈美と浩介は気付けば思い出の場所で再会する。どうしてこんなところに、と真奈美が聞けば浩介は真奈美を待っていたのかもしれないと言う。そこで二人はお互いを慰めあうために、身体をさらけ出し合う――……
私たちはこのタイミングで再会してはいけなかったのだと思う。
「浩介じゃん」
「真奈美か」
蝉の声が頭にキンキン響く鬱陶しい夏。
10年前まで一緒に遊んでいた幼馴染4人組はいつしか2組のカップルになり、そしてこの夏に別れた。
2人組はまた4人に戻ったけど、4人がまた一緒に顔を合わせることなんてなかった。
でも私と浩介は、お互いのパートナーが忘れられないのか、青春にすがりつきたいのか、あの日と同じ陽炎が揺らめくこの日にいつも遊んでいた公園で再会してしまった。
「恵理と別れたんでしょ」
「そういうお前だって大貴と別れたんだろ」
「そうだよ。ずっと一緒にいたしお互いのこと、わかってると思ってたんだけどね」
「俺だってそうだったよ」
そう、私たちはわかり合っていると思っていた。
なのに、私たちはお互いのパートナーのことを、大事な友人のことを、何もわかっていなかった。
別れは突然だった。
付き合って数年になっていた私の恋人であった大貴は、私ではなくもう一人の女の子、恵理のことが好きだと言ってきた。
それは恵理も同じで、浩介と付き合っていたはずなのに大貴が好きだと言い出した。
私は絶望した。
だって、大貴とはお互いに好きで恋人になれたと思っていたのだから。
それが実は幼馴染のもう一人の方が好きだったって、そんなことある?
私も浩介も、あの二人のことを何一つ理解していなかったのだ。
私たちを嘲笑うかのように、蝉はけたたましく鳴き続ける。
「こんなところで何してたの」
「何も」
「嘘。感傷に浸ってたんでしょ」
「そうかもしれないし、お前を待っていたのかもしれない」
「待ってた?それはどうも。傷の舐め合いでもする?」
「悪かねえな。それが今の俺たちにできる一番の慰めだろ」
淡々と続けられる会話。
私たちはどこかお互いに上の空だったけれど、先に動き出したのは浩介だった。
私の手を取り、サンダルを履いていても熱が伝わってくるアスファルトの上をずんずんと進んでいく。
行き先は浩介が今借りているアパートだ。
引きずられるようにして入った部屋の中はエアコンの利きが悪くて、外より多少はマシ、といったような具合だった。
部屋の中には、先日まで浩介以外の人間がいた痕跡が各所に残っている。
寝室に並べられたシングルの敷布団の片方は爽やかな緑色のボックスシーツに覆われていて、もう一つは紺色のシンプルなものだった。
緑色の方はしばらく誰も使ってないのか、掛布団が綺麗に畳まれて置いてあるままだ。
私は浩介に紺色の方に押し倒されて、されるがままになる。
浩介の手が、唇が、熱を求めて私の身体を這う。
とても良かったです
シチュも描写も大好きです!!
エチエチでしたし…
この後2人がどんな関係になるのか、慰め合いをしていくのか離れるのか、いろんな想像もできます。
素敵な文章をどうもありがとうございます!
たろこ さん 2020年7月28日