好きな相手は私のストーカー。反応がいちいち可愛くて…誘惑してもいいですか?
どこへ行ってもついてくるストーカーに気づいたとき、恋に落ちるなんて思ってもいなかった。うっかりストーカーにぶつかった私は彼が好みの顔だということを知る。それ以来恋心を抱いてしまった私はストーカーを誘惑しようと隙を見せたものの…
「あいつまた、お前のことみてる」
男友達の誠は最近目を光らせている。
男女数人でご飯へ行った帰り、大学も夏休みに入った夕方だった。
心配顔の誠は心なしか私に密着し、隠そうとしてくれている。
「あいつ」とは、大学のキャンパス内や飲み会の居酒屋、こうして急に決まった外出のときでも必ずといっていいほど遭遇する人物、いわゆる私のストーカーだ。
これまでにたった一度だけ、ストーカーの彼と接近したことがある。
人混みで道を間違えたと思った私は、急に立ち止まり方向転換したことがあった。
その時、背後にいたストーカー君に体当たりしてしまったのだった。
その衝撃で彼の黒縁メガネが外れてカシャーンと転がり、とっさにメガネを拾い上げた私は彼と目が合った。
ストーカー君だと服装や背格好から瞬時に気づいたのだが、この時私ははっきりとこの目で彼の素顔を見たのだった。
メガネで隠されていたその素顔は意外にも、私のどタイプの顔立ちをしていて、想像していたようなきもいストーカーとは真逆の地味なイケメン。
感動すら覚えていた私をよそに、彼ときたら動揺した素振りもなくメガネを受け取ると、何事もなかったように立ち去った。
何…あの態度…私のストーカーなら私のこと好きなんじゃないの?
もう少し動揺したり、顔を赤らめたり、鼻息を荒くしたっていいのに!
私は悶々とした思いを抱え、それ以来、彼をどうやって誘惑してやろうかと、イケナイ考えでいっぱいになっている。
そんなことは知らない、正義感の強い誠はストーカーを警戒してくれているのだろう。
「あ、いいのいいの。もう恒例になっちゃってて、見ない日は心配になるくらいだよ(笑)」
あの日以来接近したことはない。
ストーカー君は一定の距離を保ちたいタイプなのかもしれない。
それならこっちが積極的にアクションを起こすしかない、と最近では思うようになってきている。
「そんなこと言って、襲われたりしたらどうすんの?」
「そんなのあるわけない、てか全然そんな感じじゃないもん」
むしろ健全すぎて、物足りないのだ。
「俺、心配だからさ、今日はうちに泊まったら?」
さっきから誠の顔の距離が近い。
誠も私も酔ってて、距離感がバグり気味だ。
「え…誠の家?」
「うん、早いうちからお酒飲んじゃってるし、このままお前帰して、その後なんかあったら俺、責任感じるわ。俺のことなら気にすんな、亜美に何もしないって約束する!」
誠とは相棒みたいなもんで、暑苦しいくらい体育会系の誠のことは信頼している。
とはいえ、家にまで上がったことはない。
でももし男の家に入っていく私をストーカー君が見たら?なにか良い反応が見られるかもしれない、とふと思いついた。
「じゃあ、行こうかな」
私の胸は期待で膨らんでいた。
*****
レビューを書く