オープンマリッジの甘い罠
茉莉香と裕人は、茉莉香が娘の純香を出産して以来セックスレス。お互いに不倫は公認で、不貞による離婚と慰謝料の請求をしないというオープンマリッジに同意している。ある日茉莉香と一緒にファミレスで働いているイケメン大学生で茉莉香の推しである昴くんから、話があると言われ、自宅に招いてみたら…
スマホの通知音で目が覚めた。
こんな夜中に、立て続けに鳴るので、ディスプレイを見る。
「今日は楽しかった♡」
「何度もイっちゃった♡」
「またお家でお泊りしたいな。奥さん、いつ実家に帰るの?」
はあ。
夫の裕人のスマホがなぜ私の枕元に?
ベッドを抜け出して、裕人の部屋のパソコンの脇にスマホを置くと、バスタオルを巻いた裕人が入ってくる。
「起こしちゃった?」
「…何の嫌がらせ?」
「ごめん、純香の寝顔が可愛くてさ、写真撮ってたら、置き忘れちゃって。茉莉香のも1枚撮ったけど」
「…彼女から、なんか来てた」
「ああ、それどうでもいい。起こしちゃったついでに、俺も一緒に寝ていい?」
「いいよ」
元は夫婦の寝室だった私の部屋に戻ると、裕人は娘の純香に寄り添って目を閉じ、規則的な寝息を立て始める。
一度目が覚めてしまうと、私は眠れない。
*****
「茉莉香さん、どうしたんですか?疲れてる?」
「昨日よく眠れなくて…」
下げたお皿を危うく落としそうになって、推しの昴くんを心配させてしまった。
昴くんは、ファミレスで一緒に働いているバイトの大学生で、ほとんどの単位をすでに取得してしまったらしく、昼間のシフトにもよく入っている。
髪色やピアスのことで店長といつも揉めているにもかかわらず、勤務態度は真面目で、細かいところにもよく気がつくので、パート主婦の中でも浮かず、可愛がられている。
切れ長の目元に薄い唇、細い顎に長い脚。
同じ人類だと思えないほど美しく、見ているだけで幸せな気分になる。
「ご主人が離してくれないのね。わかるわぁ、そろそろ二人目も欲しい頃よね」
出たっ。ベテランパートさんのセクハラ。悪気がない分、始末が悪い。
「あの、うちはレスなので」
睡眠不足で苛立っていたので、はっきり言ってしまった。
「そうなの?そういう時はサプリよ。あと、セクシーな下着」
しまった、言うんじゃなかった。
こんな話を聞かれたら嫌だなと思って、昴くんをちらりとみると、目が合ってしまい、慌てて視線を逸らす。
*****
「茉莉香さんに、お話したいことがあるんですけど、このあと時間ありますか?」
勤務が終わり、慌てて私服に着替えて更衣室を出ると、昴くんと鉢合わせになった。
昴くんは、ボーダーニットと黒スキニーに編み上げブーツというロック系コーデで、かっこよすぎて目のやり場に困る。
「ごめんなさい。すぐに帰らないと、娘が園バスで帰って来ちゃうの。シフトのことなら、メッセージ送って」
「シフトのことじゃなくて…」
昴くんが、深刻そうな表情で俯くので、話したいことが何なのか、気になってしまう。
「じゃあ家に来る?」
裕人だって、女を家に上げているんだし、話をするだけだ。
私は昴くんを助手席に乗せ、車を発進させた。
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