シックスナインは嫌だって!
大山秋芽は今日こそ年上の恋人とのセックスの主導権を奪おうと目論む。プライドが高い秋芽は男性に組み敷かれているのが我慢ならない。しかし恋人の春樹はセックスが上手で、いつもトロけさせられてしまう。今日のセックスこそはと秋芽は能動的に挑むが、そんな挑発をしたからこそ今夜は…!?
(今日は、絶対騎乗位するっ!)
大山秋芽は、ホテルのベッドに腰掛けて1人意気込んでいた。
ここは都内の高級ホテル。白いシーツがしかれたキングサイズのベッドと、濃紺のカーペットが格式高い品位を感じさせる。外に見える夜景も、夜の中でも輝く東京タワーが見えていて綺麗だ。
(春樹さんのいいようにはさせない。この私がリードする)
秋芽は、付き合って半年になる恋人の春樹のシャワーを待っていた。
そう、付き合ってまだ半年ほどの同じ会社の恋人。
都内の夜景が見える高級ホテルに泊めてくれる年上の恋人は、秋芽の思い通りに全くならなかった。
(むしろ、いつもいつも)
「秋芽」
「あ、春樹さん」
シャワールームの扉が開くと同時に、嬉しくてたまらないとばかりに弾んだ男の声。秋芽が微笑むと、彼は笑みを深めた。
30代後半ほどの男性の黒髪は微かに濡れていて、急いでシャワーを浴びてきたことがわかる。
「あの大山秋芽さんがいることが夢みたいだ」
「いつもそれを言ってきますね」
秋芽が笑うと、柔らかな顔で春樹も笑う。凄くイケメンという訳ではないが、人好きのする顔立ちだ。どこかうっとりとした瞳は、秋芽のことが好きで好きで仕方ないと言わんばかり。
「営業部部長の春樹さんとホテルにいることも、1年前の私が知ったら驚くでしょうね」
「1年前に僕はフラれているしね。あの時君は、僕のことが嫌いだったんじゃないかと思うよ」
「いいえ、嫌いなんて滅そうもありません。皆に好かれる営業部長さんですから」
春樹は、秋芽が総務として務める商社の営業部長だ。営業部長と言えば敏腕のイメージがあるが、春樹は違う。ほんわかとした丸い雰囲気ゆえか、それとも人好きのする顔だからか、落ち着いた人なのに営業成績はよい。
(粘り強さもあるんだろうなぁ。何度フッてもめげないし、食事やデートにも誘ってきて)
正直、春樹は秋芽が相手にしないタイプの男だった。やっぱり細いイケメンの方が好きだし、付き合う男もできれば同い年がいいと思っていたのに、1回目、2回目、3回目と何度も告白されて、食事に誘われて、まぁ一度付き合ってあげようと思っただけ。
(だから、私は今の状況が気に喰わない訳だけど)
「秋芽」
春樹は名前を呼ぶと、ベッドに腰掛けて秋芽の長い髪を撫でた。
レビューを書く