女王様キャラはベッドの中ではお休みです
『はるか歩夢』の名前でコスプレイヤーとして活動する私は、着るコスチュームやなりきるキャラのせいか、高飛車でサディスティックな女に見られがち。そんな私には半井廉二(なからいれんじ)さんという、専属カメラマンの彼氏がいて…。草食系男子と思われている彼の本当の姿は、私だけしか知らないんだ。
「イベントお疲れさまでした!…っと」
SNSに数枚の写真を投稿しながら、私は気怠い気持ちでコメントを打ち込んでいた。画像の被写体は全て私で、どれも露出の多い衣装ばかりだ。コスプレイヤー『はるか歩夢』としての活動記録、ファンへのサービス、そして私の自尊心を満たすための投稿。
「またアンチのコメントで炎上するんだろうなぁ」
私が趣味で行うコスプレは、アニメや漫画のキャラクター関連のものが多い。露出の高い服装の、女王様や小悪魔系女子。それが自分には一番似合うと思うので選んでいるわけだが、批判の的になることもしばしばである。
「しばらく通知切っておこう…うるさいしね」
私がイベントに参加すれば瞬く間に人だかりができる、それくらいには有名人だった。誰しも高そうなカメラを必死に握りしめて、中には地面に這いつくばってまでローアングルでの撮影に夢中になっているカメラマンもいる。一方で私自身はといえば、胸元が大きく開いたトップスにミニスカート程度は当たり前。ときにはバストトップと陰部以外、ほとんど布がないような衣装を着ることもあった。
「あ、廉(れん)さんからだ…明後日? あいてるよーって、返事しておこ。てか、廉さんからの誘いなら断らないし」
廉さんこと半井廉二氏は、私の専属カメラマン。11歳歳上の35歳で、私の彼氏。廉さんとの交際は身近な友人のみならず、SNSの私のフォロワー約2万人にも周知されている。
「迷惑なDMは読まずに削除、っと。アカウント変えて繰り返しアンチメッセージ送ってくる人は、どんどん通報しますよ~」
イベントでは単に写真を撮られるだけでなく、成人向けのコスプレROMを販売している。そんな私のもとには、山ほどのセクハラメッセージ・風俗店やAV出演の勧誘・男性器の写真・個人撮影のお願いという名のセックス希望がくるが、全部無視だ。
「私には廉さんだけいればいいんだ」
実年齢よりは若く見えるものの、容姿や服装は地味。イベントでは私の指示に従って雑務をこなして、荷物を全て持ってくれる廉さん。そんな彼を多くの人が「ドMの草食系男子」「年下彼女にへつらうダサい男」「なんで『はるか歩夢』みたいな高飛車女と」などと揶揄している。
「みんな、何にもわかってないんだから」
私だけが知っている、廉さんの本当の顔。ドMでも草食系男子でもない。きっと誰も想像できないだろう。あの大人しくて優しそうな廉さんが、実は凄まじくサディスティックなS彼だなんてね。
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「ンぐぅッ…ッぅ…」
「歩夢ちゃん、もっと喉まで。前に教えた通りにやってくれないかな?」
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