いって (Page 2)

『お元気ですか?瀬戸朝陽です。これを見てるということは』

DVDはふざけた言辞で始まった。

用意した折り畳みのローテーブルの上、中古の安いパソコンの画面に映るのは、元気な元カノの姿だった。

腰まで届く栗毛を、人形のようにクルクルと巻いた女。

おれの好みとは全く反対だった女だ。

「なんだこりゃ」

その女がきゃらきゃら屈託無く笑って、ぺちゃぺちゃ陽気に喋っている。

おれは馬鹿馬鹿しくなり、動画を止めようとした。

『……に、ストリップ始めます!』

は?

『デン!デ、デッデ、デデデデン、デデ……アハッ』

いや、BGM口で言うのかよ。音くらい編集で付けろや。

『……ぁはは』

わろてるやんけ。

恥ずかしさをごまかすためか、仕切りに喋り倒す。その様がこちらとしては恥ずかしいのだけれど。

もたつきながらも、一枚一枚衣類を脱いでいく。

ブラウスが脱げる。スカートが脱げる。

おれはパソコンの前、居住まいを正しそれをじっと見ている。

カメラを見て、あいつは眉を下げて困ったように歯を見せる。

キャミソールも、ストッキングも肌から取り払われる。

小ぶりな胸を包むのは、初めてあいつに贈ったブラジャーだった。

ショーツとセットで、淡い紫色のものだ。胸元に細やかなレースが付いている。可愛い、とあいつが言ったもの。あいつはサイズが合わなくて、キツイと言っていた。

あいつが、アンダーバストをなぞる。

『これサイズが合わなくてキツイんですけど…』

やかましいわ。

『あはは』

笑いながら後ろに手を回し、ブラのホックを器用に外す。

窮屈なブラジャーから解放されたバストが、ふわんとあらわになる。締め付けられていた跡が胸にくっきり残っている。その跡を気にするように、何度かさすっていた。

跡が取れないとわかると、諦めてショーツに手をかける。

果実の皮が剥けるように、それはつるりと下げられた。恥じらって脚をもじもじと動かす。

『ふふふ』

気がつけばおれは、食い入るように動画に見入っていた。

画面外に手を伸ばし、あいつが何か手に取る。

『最初で最後だよ、こんなことするの。ねぇ初めてこんなの買っちゃった』

手にする物は、男性器を模したあれだった。

『蓮のはそんなに大きくなかったかな、と思って、まぁ、普通のサイズを購入しました』

ひっぱたくぞ、と画面越しにツッコミを入れる。

『吸盤で床に張り付くタイプです』

しゃがんで床に固定しているようだが、いかんせん画面から見切れているので、実際何をしているのかここからじゃよく見えない。

作業が終わったのだろう、高揚とした口調でおれに話しかけてくる。

『見て!床からアレ生えてんのめっちゃウケんだけど!』

だから見切れて見えないんだって。動画撮るの下手か。

お構いなしに、あいつは話しを進める。

『床から生やしたら、まあヤることは一つですよね。そうです。入れます。スムーズに事を進めるため、一応ほぐしてはきたのですが、怖いので念のため少し、します』

はい…。

『やっぱりちょっと恥ずかしいや』

今、自分で指を入れているのだろうか。そう考えれば、なんとなくこちらも落ち着かなくなってくる。

『えー…、動画はノーカットでお送りしたいと思いますので、ここは見ない振りをしていただけると助かります』

ふよふよと視線を泳がせ、こっそりズボンの中に手を伸ばす。おれのこれも念のため、です。

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