彼に覗きがバレまして (Page 2)
「大葉さーん、一昨年の帳簿ちょっと書庫から取ってきてくれない?」
「はい喜んで!」
「え?」
「あ…行ってきまーす」
危ない危ない。今ちょうどあの二人がいないからもしかしたら書庫かも、なんて期待がついうっかり。
周りにバレないように小さくスキップしながら、地下の書庫までやってきた。
「…」
ドアを開ける前に、聞き耳。誰の声も聞こえない。
ドアノブを回してそーっと中に入ってみたけど、やっぱりあの二人がイチャイチャしてる様子はなかった。
「なーんだ、いないのか」
「誰がいないって?」
「わぁっ!!」
後ろから突然声が聞こえてきて、飛び上がる。振り返ると、そこには野々原さんが。
「驚き過ぎだろ」
「いきなり声かけるからですよ!」
心臓取れるところだったじゃんもう…
野々原さんは、今日も素敵イケメン。私の一つ上で、長身で、スリムスーツが超似合ってて、鼻がシュッとしてて、目が切長。そしてセクシーな泣きぼくろ。
正に完璧、言うことなし。しかもちょっと冷たそうな感じなのに、これで受けなんだからもうホントありがとうございますって感じ。
「ねぇ、大場さん」
「はい」
野々原さんの薄い唇が、ニンマリと弧を描く。
「知ってるでしょ、俺と市川主任のこと」
「っ」
咄嗟の指摘に、声が出せなかった。
「バレバレだからね?覗いてるの」
「いや…えっと…その…」
何で返せばいい?完全にバレてるっぽいし、言い訳したって意味ないよね…
「男同士で気持ち悪いって思ってるんでしょ」
「まさか!ありがたみしかありません!」
「は?」
「あ…」
つい鼻息荒くして反論しちゃったけど、まずは覗いてたことを謝らなきゃだよね。
「すいません、覗いたりして」
「いや、それはまぁこんなところで会ってる俺達が悪いんだけど」
「できれば、これからもここでイチャイチャしてください」
「…大場さん、言いふらさないの?」
「まさか!」
そんなことするわけない!私だけの楽しみなのに!
「ふぅん?おもしろいね大場さんって」
野々原さんはなぜか、楽しそうにスッと目を細めた。
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