彼に覗きがバレまして
小規模の印刷会社に勤めるBL好きの大場さくらは、同じ会社の男性社員二人を観察するのが趣味だった。きっかけは、その二人が地下にある書庫でイチャイチャしているのを偶然目撃したから。まさか三次元でBL拝めるなんて!と興奮していたさくらだったが、覗きがバレてとんでもない展開に…!
「はぁ、尊い…」
私、大場さくらはいわゆる腐女子。BL漫画が大好きで、学生の頃は腐女子仲間と同人誌なんか描いてた黒歴史を持ってるくらいの筋金入り。
二十五歳になった今もそれは変わらず、暇さえあれば電子書籍の読み漁り。こんなに簡単にBL読めるなんて、いい時代になったもんだ。
「おはよう」
「あ、おはようございます」
私の勤めている印刷会社は、従業員二十人ほどの中小企業。だから、皆顔と名前くらいは頭に入ってる。
さっき私に挨拶してくれたのは、営業担当の野々原さん。私の二つ上で、誰にでも気さくなスーツの似合うイケメンだ。泣きぼくろのある切長の目元がセクシーなんだよね。
そして私は、いつも彼の動向をチェックしてる。それはなぜかというと…
「ほら、口開けろ」
「ん…っ」
時々地下にある書庫で、彼の濃厚なキス現場をたまたま目撃してしまったからだ。声が聞こえて、バレないようにそっとドアを一センチくらい開けて。
そしたら野々原さんと、それから彼と同じ営業部門の市川主任がガッツリキスしてた。野々原さんは、イケメン。市川主任も、同じくイケメン。つまりは、三次元BL。尊過ぎてよだれ出そうになっちゃった。
「おいここパンパンじゃん。このあとどうすんだよ」
「…ほっとけよ」
「ホントは触ってほしいんだろ?ほら」
「…んっ」
さ、最高かよ。見た目Sっぽい野々原さんが受けで、二重のパッチリ童顔の市川主任が攻めとか、覗くなっていう方が無理でしょ。
というわけで。私は絶対の絶対に、何が起こってもこの会社を辞めないとこの時誓ったのです。
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