アクセサリーは淫らな贈り物
コスプレが趣味の私・美桜は、趣味でアクセサリーを作っている吉沢さんと付き合っている。彼が作ったアクセサリーで淫らに飾られ、鏡越しに自分の痴態を見せられる私。「僕のアクセサリーだけを身に着けているときは、僕が言ったことしかしちゃダメだよ」彼の言葉が私を支配する…。
『女に服を贈るのは、その服を脱がせたいから。ネックレスを贈るのは、独占したいから』
有名な言葉だけど、そんなのドラマとか映画の中だけだと思ってた。
でも。
「あぁ。よく似合っているよ、美桜さん」
男性らしい節の目立つ吉沢さんの手が、私の背後からネックレスをつけてくれるのが鏡越しに見える。
私の誕生石であるガーネットのような深い赤色のガラス製ビジューを中心に、色とりどりのクリスタルガラスが連なったゴージャスなネックレス。
若い頃はジュエリーデザイナーを目指していたという吉沢さんが自身で作った一点物だ。
「ありがとうございます。吉沢さんの作るアクセサリー、好きです」
鏡に映る吉沢さんに向かって笑みを浮かべると、彼の目がスッと細められて耳に唇が寄せられた。
「他のアクセサリーも付けたい…いいかな?」
普段より少し低くかすれた声を吹き込まれ、お腹の奥がずくりと疼く。
「…はい」
期待が滲んだ声で返事をすると、私はいつものように肩ひもを外しキャミソールワンピースを脱ぎ捨てた。
開け放たれたカーテンから冬の澄んだ陽の光が射し込んで、二人の姿をはっきりと全身鏡に映し出す。
ボルドーのジャケットに、ボタンを一つ外した杢(もく)レッドストライプのシャツ。そしてブラックデニムという、雑誌の中でしかお目にかからないようなオシャレな装いの吉沢さん。
それに対し私が身に着けているのは――さっき彼が付けたネックレスだけ。
「ふふ…今日もきれいに飾ってあげるね、美桜」
チュッとリップ音を立てて頬にキスが降ってくると同時に腰骨をするりと撫でられて、体がピクリと跳ねた。
*****
私が吉沢さんと出会ったのは趣味のコスプレがキッカケだ。
といっても吉沢さんはコスプレイヤーが使う小道具というかアクセサリー類の製作をしている人で、自分でコスプレするわけじゃない。
手先が不器用な私は衣装も小道具も全部外注していたのだけど、アクセサリー製作を頼んでいた人が引退してしまい途方に暮れた。
そんなとき知人に紹介してもらったのが吉沢さんだった。
若い頃はジュエリーデザイナーを目指していたという彼は、普段は会社員をしつつオリジナルアクセサリーの製作販売をしている、いわゆるハンドメイド作家さん。
友人の依頼があったときだけコスプレ用アクセサリーを作っているという人だった。
最初は遠慮がちに注文した私だったけど、作品の出来のよさと吉沢さん自身の人柄のよさもあって段々と注文頻度が増して、それに比例して会う機会も増えた。
やがて彼に惹かれているのを自覚したころ、彼も同じ気持ちだと告げられてお付き合いが始まった。
そのときは彼が自分で作ったアクセサリーで恋人を飾り立てるのが好きな人だとは思いもしなかった。
それも、まさかあんなアクセサリーを作っちゃうなんて…。
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