一夜のあやまちは画面の向こうに
失恋してバーで酔い潰れていたアラサー鹿内翠。彼女が出会ったのはどこか見覚えのある年下イケメン。酔った勢いのままにホテルに入っていた。翌朝、目が覚めると彼はもういなかったが、テレビをつけると、画面の向こうに彼の姿が…。
浮気されてた。終わってしまった。破局した。アラサーの失恋は辛い。次を探すのがおっくうになる。
行きつけのバーでバカみたいにお酒を飲んでいると、さすがにそろそろこの辺にしてくださいよ、とマスターにたしなめられた。
はあい、とろれつの回っていない返事をして、立ち上がると、背後を通った男の子にぶつかってしまった。
「ご、ごめんなひゃい…」
謝罪の言葉すらままならない。
人として我ながらどうかと思う。
私の体を支えながらこちらを見下ろす年下っぽいイケメンは、どこかで見覚えがある気がした。
常連さんだろうか?
「…大丈夫ですか?」
足腰がろくに立たない私に苦笑しながら、彼が私を運んでくれる。
「あー、ケン君。ごめんね。翠さん、俺がどうにかするから」
「ああ、大丈夫。マスター。表でタクシー拾うよ」
「そう?悪いね」
彼はケン君、というらしい。
ケンくんに引きずられるみたいにして、バーの外に出た。
そしてそのままケン君は私を引きずるようにして、連れて行ってくれた。
あれ、タクシー?タクシー呼んでくれるんじゃなかったっけ。
フラフラする頭でそのまま彼について行ってしまった。
「翠さん…翠さん」
「ん…」
目が覚めるとフカフカのベッドの上だった。
ダブルベッド。薄暗い照明。
「ここ…」
「ホテル」
ケン君がにっこりと笑った。
そっかあ、ホテルかあ。
「ホテル!?」
慌てて起き上がる。服装はやや乱れた普段着のままだった。
「…ホテル…?」
「おはよ」
おはよう、と言われたけれど、時計を見るとまだ日付が変わったくらいだった。
「…ええっと、ええっと…」
「大丈夫?飲み過ぎだよ、翠さん」
「わ、私の名前…」
「マスターが呼んでたよ」
言われてみれば、そんな気もする。
「タクシー捕まらなくて、連れ込んじゃった」
最近の子ってこうなの?
いや、私がお堅すぎるの?
「ね、翠さん。俺、翠さんが起きるまで我慢してたよ、偉いでしょ?」
「え、偉いです…あ、ありがとうございます…」
可及的速やかにホテル代をお支払いして帰ろう。
そう思ってベッドから立ち上がろうとした私の体を、ケン君は押し倒した。
「…だからご褒美、ちょうだい?」
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