居酒屋で知り合った男性にいつの間にか抱かれてた件について
仕事での鬱憤を晴らすべく、居酒屋で飲み荒らしていると人懐っこい笑みの男に出会う。一緒に飲もうという男の提案に、彼氏はいるものの少しだけならと了承。しかし気がついたときには何度目かもわからぬ絶頂を迎えており…快楽塗れの夜は続く。
「あり得ないからぁ!」
ガンッ、っと。
ジョッキを机に叩きつけながら純香は口元を拭った。
勢いのあまり立てかけていた橋が皿から落ちる。
それがなんだか気分が落ちている自分のようで、純香は口を尖らせた。
「お客さーん…そろそろやめておいたほうが…」
「まだ行けるわよコンチクショー!こんなんで終わらすわけないでしょう!」
「ええ…」
店主の静止を無視してビールをもう一杯頼む。
これが何杯目なのかもよく覚えていない。
店主に会社の愚痴をぶちまけていたらどんどんエスカレートしていった結果がこれだった。
「なぁにが『君は残業しても平気だもんね。帰りを待つ旦那さんいないし』だ!彼氏いるわ!」
「まぁまぁ…悪気ないかもしれませんし…」
「悪気ない方がタチ悪くないですか!?自分が奥さんできたからって調子に乗って!」
「まぁまぁ…」
店主の苦笑にさらに口を尖らせる。
苛立ちはおさまらず、むしろ増してる。
明日もまた会社に行くのだと思うとこの場から帰る気にもならず、小さな反抗として再び酒を煽った。
浅漬けされたきゅうりを摘みながらふと尿意を感じる。
席を立つのはかったるいが、そのまま無視することもできない。
純香は重い足を動かしてゆっくりと立ち上がった。
フラフラとした足取りに思わず店主が声をかけるも本人には届かない。
案の定、足がつっかえ視界がぐるりと回った。
そのまま受け身を取れるはずもなく、地面と熱烈なキスをし…。
「危ないですよ。あまり飲みすぎては」
「…へぁ?」
腹のあたりに重心が乗ったかと思えば近づいていた地面が停止する。
状況が飲み込めず辺りを見渡すと、純香の体を支える男の姿があった。
ようやく自分が助けられたことに気づき、純香は慌てて頭を下げた。
「すいやせんすいやせん、自分不出来なもんで」
「いつの時代の人?」
頭を下げながら男の顔を盗み見る。
まるでゴールデンレトリバーのような人懐っこい顔と筋肉質な体。
柔和な笑みは世の女性が放っておかなそうだ。
目の保養にしては十分な人材に純香は心の中でガッツポーズをする。
顔を上げると彼は心配そうに口を開いた。
「お姉さん荒れてたようだけど大丈夫?」
「見てたんですか!?」
「うん、まあ隣の席だったしね」
そう笑う男にポカンと口が開いて見上げてしまう。
隣の席など全く見ていなかった。
というか人が座っていたことすらよく覚えていない。
こんなイケメン見逃していたと思うと少々悔しいというものだ。
純香は自身の記憶を辿っていると、男は小首を傾げた。
「お姉さん一人?俺も一人なんだけど、もしよかったら一緒に飲まない?」
「ひ、ひとり…ですけど…!?」
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