好きな相手は私のストーカー。反応がいちいち可愛くて…誘惑してもいいですか? (Page 2)
誠の部屋は大学近くの安いアパートの一階。
「どうぞ」
「意外と綺麗だね」
なんて言いつつ、ドア前でさりげなく周囲を確認する。
ストーカー君は周囲からも見つからないようなコンクリートの塀の端っこで、スマホをいじりながら立っている。
「わ♡」
思わず喜びの声が漏れてしまい、誠が眉間にしわを寄せた。
「ん?どうかしたか?あ、風呂はいるよな」
「うん、入る入る」
誠は手際よく着替えとタオルを用意してくれて、こんなにマメなのにどうして彼女がいないんだろうと改めて思った。
お風呂から上がり濡れた髪をドライヤーで乾かしながら、私はストーカー君はどうしているのかとても気になっていた。
「じゃ俺も風呂入って寝るわ、お前も寝ろ」
「お酒ないの?二人で飲もうよ」
「ああ、うちビールしかねぇ、お前ビール飲めないよな」
「私買ってくる!コンビニすぐそこだったよね?誠はお風呂入っててよ。お風呂上りに飲めるようにかってくるからさ?」
「危ねぇよ、俺もいく」
「まだ、人通りも多い時間だし大丈夫、子供じゃないんだよ?」
「…わかった、気をつけていけよ」
「はいはい」
お酒を買う、というのはもちろん口実だ。
今日こそはなんとしてもストーカー君と会話して、あわよくば私の気持ちを伝えたい!と酔った勢いも相まって決意してしまっている。
しばらく歩いていると、やはり日が暮れて間もない時間ですれ違う人たちは多い。
私は神経をとがらせてわずかについてくる足音に気がついていた。
コンビニでお酒を買って、さりげなく後ろを確認すると彼が遠くに見えた。
やった!心の中で小躍りした。
そしてこのふたりの空間を楽しみたくて、誠の家の方角とは反対の方の、もはや知らない土地をぐるぐる遠回りして歩いていた。
えっと、あれ?ここどこだろう?
不安がよぎり、また知らない道へと進もうとした時、不意に足音が近づいてきて、手首をつかまれた。
「ひゃっ」
「あ、急にごめんなさい…でも、あの!…そっちに行っちゃうと、国道に出て、戻るの大変になってしまいます…も、もしかして、迷ってますか?」
道に迷ったかもという不安はもちろんあったけど、ストーカー君が声をかけてくれ、心配までしてくれるなんて!と感動していた。
「あなた誰?」
私はとぼけたふりをして聞いてみた。
でも私の問いかけに答えることなく、ストーカー君は私の手を引いて元の道へ引き返してくれる。
「あ、あのっ」
グングン歩く彼を止めたくて、わたしは足を止めた。
「ちょっと、休憩…したいです」
彼はきょろきょろと辺りを見回し、大きなマンションが数棟立っている広場にあるベンチまで連れて行ってくれた。
ふたりで並んで座り、私は彼をちらりと盗み見た。
間近でみつめるのはあの時以来で、彼がこっちを見ないのをいいことにまじまじとしばらく見つめる。
まつ毛ながいなぁ…私より色白じゃない?もしかして、年下??あ、でも同じ講義受けてたことあったなぁ…じゃあ同い年か…っていうか、やっぱり好きな顔だ!
などなど私の頭の中は独り言でいっぱいだった。
すると突然彼がこちらを向き、目が合った。
「あ、あんまり…みないでください…」
彼は頬を赤らめているが、ぶっきらぼうなセリフからは私への好意がまったく感じ取れない。
「ね、どうして私が迷ってるってわかったの?」
「…なんとなく」
「あなた、もしかして同じ大学の人?なんか見たことある気がするの」
「はい…工学部の3年です」
白々しいかも?と思ったが、彼は意外と素直に答えてくれた。
「やっぱり!なんか見たことあるもん」
私はもう一度彼の顔を見た。するとさっきとは違い彼が真っ直ぐにこっちを見ている。
「どうか…した?」
「その持ってるの、お酒ですか?…よければ、僕飲んでもいいですか?」
「うん、いいよ。ぬるくなっちゃってるけど…はい」
わたしはコンビニで買ったチューハイの缶を差し出すと、彼は一気に1缶飲み干した。
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