目蓋 (Page 2)

毎日退屈している。
家で好き勝手に生活していて、まさにペット状態。
ニートをやっている私には、暇は天敵だ。

それにやっと見つけた相手が、運が悪いことに絶賛恋愛中のようだった。
普通の女だったら、そう思うところだろうが、私にとってこれは逆に都合がいい。
私は恋愛よりも、もっと楽しいことがしたいからだ。

窓の外で、楽しそうに会話をしながら帰宅する彼女と思わしき女性とコージくん。
見た感じは美人だし、コージくんよりも年上だと思われる。
母親の仕事の関係上、大学生は大量に観察しているけれど、見た目の感じは大学院生というよりは、研究職っぽい雰囲気。

お堅い感じがなんとなく気に入らない。
母と同じタイプで隠れて男遊びをしていそうな感じはうかがえない。

家の前で、丁寧にコージくんにお辞儀をして帰っていく彼女。
男が家まで送って貰えるってどんな関係なんだろう。
しかも徒歩で、これが年上の女なのか。
コージくんがどんな男なのか、すごく気になって仕方がない。

――これじゃ、完璧にストーカーだな、私。

*****

朗報は突然やってくる。
いつも通り窓の外を見ているとコージくんと目が合った。
驚いたけど、自然に笑って手を振ってみる。
今日だけ、たまたまアナタを見つけましたみたいな感じを出すのが楽しい。
そして、ごくごく自然に窓を開けて声を掛ける。
“私は完全に安全なアナタの幼馴染です”という雰囲気を全開に出して。

「あっ、今日は彼女連れてないんだ」

「え?見られてました?」

「まぁ、目立つからね。2人共、長身だし」

家の中を確認する振りをする。
警戒はされたくない。

でも確実に家には上がって貰わないと困る。
これ以上コージくんをただ監視しているだけの生活ではつまらないから。
逆にコージくんの家に上がり込むことも考えたけれど、知らない家に上がり込むのは分が悪い。

「ねぇ、よかったら家でお茶でもどう?
実は今日、お母さんが遅くまで帰って来なくて、暇なんだ。
今日は予定も何もないし」

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