大嫌いなイケメンのカフェ店長に強引に迫られて溺れた夜 (Page 2)
「いいプロシュートが入ったんですけど、バケットサンド作りましょうか?それともパニーニのほうがいい?あと、ラザニアも絶品なんでぜひ」
そんなこと、玲生くんがここに来る前からとっくに知ってる。
「え?あのさ、見てわからない?玲生くんのせいで私、過労死寸前なんだけど」
「何ですかそれ?身に覚えがないんですけど」
「玲生くんが、うちの可愛いバイトちゃんを誑かしてくれるお陰で、みーんな辞めちゃうんだけど」
玲生くんが店長になってからというもの、うちのバイトがみんな玲生くんを好きになってしまって振られ、気まずくなって辞めてしまうというのが続いている。
「いやいや、メンヘラ女ばっかり雇う柚葉さんのお陰で、迷惑してるのは俺なんだけど」
「ちょっとその、メンヘラ女ってなによ。寧々ちゃんも、ぴろ子ちゃんも、モヨちゃんも可愛くって、接客態度もよくて最高だったのに…」
制服姿の女の子たちが、玲生くんに近づいて来る。
「玲生サン♡友達連れてきちゃった。紹介するね」
「おおっ、さやかちゃん!やっぱり類は友を呼ぶって本当だったんだ。みんなめっちゃ可愛い!」
私は深いため息を吐くと、ラテの料金をテーブルに置き、店のバックヤードに戻った。
*****
夜には客足が途絶えたので、早めに閉店の準備をし、定時の9時半に上がった。
それにしてもお腹がすいた。
休憩時間に、素直にラザニアをいただいておけばよかった。
「柚葉さん、ちょっと話があるんですけど」
ビルの通用口を出ようとしていたところで、玲生くんに声をかけられた。
「私は玲生くんに話なんてないよ」
「これから本店のレストランに行くんで…もちろん奢りです」
「え…あ、ありがとう」
空腹で死にそうだったので、玲生くんが停めたタクシーに乗った。
店に到着し、注文を済ませると、玲生くんは仕事があるからと厨房に消え、前菜のカルパッチョとワインが運ばれてきた。
ああ、幸せ…。
でも玲生くんも、朝から通しシフトで働いてたはずなのに、また本店で仕事って、なんて人使いの荒い店なんだ。
夢中になってカルパッチョにがっついていると、玲生くんがやってきた。
「あ、玲生くん、遠慮なくいただいちゃってます。ところで話って?」
「俺とつき合わない?柚葉さん」
「え?無理なんだけど。玲生くんみたいなチャラくて自信過剰な人誑しって、一番嫌いなタイプなの」
「なんだよ、せっかく人が平和的な解決方法を提案してんのに。柚葉さんって、思ったより頭悪いな」
「何よ、頭悪いって!」
メインの桜鯛のアクアパッツァが運ばれてきた。
「俺たちがつき合ってるって公表すれば、俺もメンヘラ女に追いかけ回されないし、柚葉さんもバイトが辞めなくなるだろ」
「え?そう言われてみれば、確かにそうだけど…」
つき合う振りってことか。
「名案だろ。はい決定。じゃあ乾杯ね」
反論する隙も与えられないまま、玲生くんとグラスを合わせた。
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