宇宙船で愛のエチュード。切なく燃え上がる今日限りの情事は激しく甘く… (Page 2)
「おい、響生…どうなってんのか説明してくれよ」
翼が響生を背中からがっつりと抱きしめ、頭を撫でる。
顔を上げた響生の目は虚ろだ。
「結論から言うと、俺たち四人揃って生還はできない。成層圏に入るまでに酸素がなくなるんだ。でも、一人が犠牲になれば三人は生還できる。だからさ…俺が犠牲になる」
「おい、響生っ。何言ってんだよ。何勝手に犠牲になってんだよこの野郎っ…」
翼は、響生の胸ぐらをつかんで乱暴に揺する。
「翼、落ち着いて…」
「…わかった」
翼の表情が、憑きものが落ちたように突然柔らかくなる。
「響生はさ、亜希の側にいてやんないと。亜希は繊細だから、不安になると何しでかすか、わかんないだろ。だから逝くのは俺な」
「やだよ。そんなこと言わないで、私も一緒に連れてって」
翼が逝くなんて嫌だ。もちろんそれが響生でも嫌だけど。
「紫穂は連れてかないよ。犠牲になるのはひとりでいいんだし、こういう場面では男が犠牲になるのが筋ってもんだろ」
翼が、蕩けるような優しい笑顔で言うと、突然、亜希がケラケラと楽しそうに高笑いを始めた。
「やだ、ばっかみたい。貴重な時間なのに、私たち揉めちゃって」
亜希の目は据わっていて、手にはいつの間にかキャンプ用の折り畳みナイフが握られている。
「ね、響生、動画撮って。ていうか生配信してほしいんだけど…」
「亜希、どういうつもりだよ?」
「自殺配信するのよ、決まってるでしょ。私さ、高校の時に未遂してるのよね。でもサークルで4人でいるのが楽しくってさ、死にたい気持ちも薄れてたんだけど、でもやっぱり死に損ないだから、私が逝くね」
やばい。
亜希からナイフを奪おうとしたら、私より一瞬早く響生が亜希をソファに押し倒し、ナイフを持った右手を掴む。
翼がナイフを取り上げ、ポケットにしまう。
「響生…重いよ」
響生は亜希にのしかかる身体をわずかにずらす。
「ごめん…てかさ、やっぱり俺と…翼が犠牲になる」
「賛成」
翼が同意する。
「だって、女は子供産むからな。お前らちゃんと生き残ってお母さんになるんだぞ」
「ちょっと待ってよ。私は死にたいの。子供なんて産む気な…んんっ…!」
響生が亜希の唇をキスで塞ぐ。
亜希は嫌がる様子もなく、ふたりは貪り合うようなキスを始める。
え?こんなときに…。
と、思ったら、翼に後ろから抱きすくめられた。
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