会社では頼れる先輩、でもその本当の顔は…?

・作

有名なIT企業で働く、川瀬美玲。同じ部署の長谷川涼は、頼れる2つ年上の先輩でよく気にかけてくれている。ある日、仕事の相談のためバーで話しているうちに、少し酔っ払ってしまって…「今は川瀬、じゃなくて美玲って呼んでもいい?」普段とは違う距離感に、何故か心が舞い上がる私。「帰りたくない。今夜、俺に時間をくれないかな?」だんだん見えてくるSっ気に惑わされて…?!

「長谷川先輩、おはようございます」

都内にあるオフィスで働き始めて2年。長谷川先輩は2つ上の仕事がよくできる先輩で、いつも仕事の相談をしたりフォローしてもらったりしている。

「おはよう川瀬。昨日話していたプロジェクトは順調?」
「はい!順調です!あの、それとは別なんですけど、少し相談したいことがあって…」

アドバイスをもらっていたプロジェクトは順調なものの、今後のキャリアプランについてかなり悩んでいた。同じ部署の先輩で、メキメキと頭角を表す長谷川先輩に相談したいと思っていたのだ。

「相談したいこと?仕事終わってから時間作ろっか?」
「いいんですか?ありがとうございます!」

仕事終わりに軽く飲む約束をして、私はその日の仕事に打ち込んだ。

「それで、相談っていうのはどんな話?」
金曜日だというのに長谷川さんが連れてきてくれたバーは程よく空いていて、個室のような空間でゆったりと話すことができた。

「私、この会社に入って2年経って、少しずつやりたいことも増えてきて。でもこれからのキャリアプランを考えると、自分の適性とか明確にこれをしたい!ってものが絞りきれなくて」

親身になって話を聞いてくれる長谷川さんはとても頼り甲斐があって、相談しているうちに悩んでいたことも自分の心の中で気持ちが決まり始めた。

「2年前は川瀬も新入社員だったのに、本当に早いなあ」
「本当ですよね、でも長谷川先輩は私が会社に入った頃からずっと仕事ができて、ずっとかっこよかったなあ」
「かっこいい?」

少し酔いも回って気持ちが緩んでいたのか、思わず思っていたことをそのまま口に出してしまった。

「あ、えっと、かっこいいっていうか、仕事すごいできるし、んー、素敵っていうか…」
「可愛い」

慌てる私に、長谷川さんは余裕の笑みを浮かべる。

「美玲」
「え??」

突然先輩に聞き慣れない呼び方をされ、耳を疑う。

「今は川瀬、じゃなくて美玲って呼んでもいい?」

先輩が私の顔を覗き込む。急に近くなった距離にうるさい心臓を押さえながら、かろうじて返事をする。

「えっと、はい…あ、あの、時間大丈夫ですか?知らない間にすごい話しちゃってあの、もしお急ぎだったら全然気にせずに、」
「帰りたくない。今夜、俺に時間をくれないかな?」

先輩が私の手を握る。大きくて綺麗なその手が、誘うように私の手の上を動く。
ずっと憧れて、好意と認めなかった感情を抱いていた先輩の誘いを、断るわけがなかった。

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