家政婦の面接に行ったら情婦の面接だった。

・作

仕事も恋もうまくいかず転がり込んだ友人の家を今月いっぱいで出ていかないといけない私は、藁にもすがる思いで住み込み家政婦の面接を受けることに。雇い主は金髪の年下美青年。彼はゲーム実況配信で生計を立てているらしい。どうにか採用してもらえそうだけど、最終試験はなんと…セックス?!果たして合格できるのかしら?

 私、周藤冬江はかなり切羽詰まっていた。

 まず会社の上司と喧嘩してその場で退職宣言して無職になった。

 その日の夜に同棲していた彼氏と喧嘩別れして家を飛び出し実家に戻った。

 更にその数日後に両親と喧嘩になり実家を追い出されて友人の家へ転がり込んだ。

 友人からは「私も結婚して来月引っ越すから早く出て行ってね」と言われた。

 そして今。

 友人は今月末で引っ越してしまう。

 いくつも面接を受けたし、引っ越し先も探したけど、結局まだ仕事も家も決まらなかった。

 こうなったら、住み込みの仕事を探すしかない。そう思って求人を探すものの、遠方のリゾート地しか見つからない。この期に及んで…とは思うけど、いきなり知らない土地に行くのは怖い。

 近場で住み込みの仕事がないだろうかと、家政婦紹介所に問い合わせた。

 事情を説明すると「1件だけあるが、雇い主が厳しくて今まで紹介した家政婦はすべて断られている」と言われた。でも、もうこれしかない。

 頼み込んでどうにか面接を受けることになった。

 

*****

「え…もしかしなくても、ここで働くの?」

 面接に指定された場所は雇い主が住んでいる自宅で、駅前にある超高級マンションだった。

「エントランスがあるからそこで待っているように、だっけ…私が入っても大丈夫なの?場違いな感じが半端ないんだけど…」

 おそるおそる自動ドアを通ってマンションの中に入ると、右側にテーブルや椅子が配置された共用部分があった。

 そこにある椅子に座ろうと思ったら、先客がいた。

 金髪の美青年で、私よりも年下に見えた。彼は読みかけの本を閉じて、私の方を見ると話しかけてきた。

「あなたが周藤さん?」

「えっ?あっ、はい!」

「そ。じゃあついてきて」

 彼は立ち上がるとエレベーターに向かって歩き出した。

「すみません、あの、貴方が『神田ななみ』さんなんですか?」

「そうだけど」

 神田さんは、だから?と言いたそうな顔をした。

 名前の響きからして、勝手に女性だと思い込んでいた。家政婦紹介所の人の話も焦り過ぎてぶっちゃけよく聞いていなかった。

 覚えているワードは「神田ななみさん」「一人暮らし」「洗濯、掃除、炊事全般」の3つだけ。

 本当にいいの?と最後にしつこく念押しされたのは、こういうことだったからなんだ。

 後悔してももう遅い。やっぱりやめますなんて今更言えない。

 エレベーターの階数表示を見つめながら、腹を括った。

 

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