オープンマリッジの甘い罠 (Page 2)
「ところで話って?」
買ってきたマカロンをお皿に載せ、コーヒーを落としていると、昴くんは冷蔵庫の陰に隠れ、居間のソファに座っている純香に向かっていないいないばあをしている。
「あの…他のパートさんからは、口止めされてるんですけど…茉莉香さんのご主人が浮気してるって…」
「なんだ、そんなこと?知ってるし、どうでもいい。純香、テレビ見る?」
純香は何日かお昼寝をしていないので、今日は疲れ気味だ。画面を見ながら、すでにぼおっとしている。
「俺的には許せません。こんなに綺麗な奥さんがいるのに、不倫するなんて」
「昴くん、私のこと気にかけてくれてありがとう。でもそれはお互いに公認なの。うちはオープンマリッジだから」
純香を出産したあと、体調不良と慣れない子育てで、すっかり気が滅入ってしまい、セックスをする気になれなかった。
裕人からの誘いを断り続けていたら、そのうちに、完全なレスになった。
育児にもやっと慣れた頃、私から誘ってみたけど、はぐらかされるので理由を聞くと、拒否され続けて心が折れもう私では勃たないと言われた。
それから、オープンマリッジへの同意を持ちかけられ、互いの不貞行為を理由に離婚や慰謝料を請求しないという書類を、弁護士を介して作成した。
元はといえば私のせいだし、私のことも純香のことも大事にはしてくれるので、文句は言えない。
「…ってことは、茉莉香さんが不倫しても、ご主人は何も言えないってことなんですね」
「まあ、そういう理屈にはなるわね」
昴くんの表情が、ぱっと明るくなる。
「茉莉香さんにお願いがあるんです。俺、性感セラピストの研修を受けてて、あの…練習をさせてもらえませんか?」
性感セラピスト?
「そっか。夫にかまってもらえなくて欲求不満って思った?馬鹿にしないで」
「そんなつもりじゃなかったんです。ごめんなさい」
昴くんは、頭を抱えて俯いてしまう。
ああ、推しなのに、きついことを言ってしまった。
「…話ってそれだけ?送ってあげたいんだけど、純香が寝ちゃったからごめん。駅までの道わかる?」
立ち上がり、玄関に向かう。
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