サレ妻とサレ夫が離婚お疲れさまパーティーをしてみたら… (Page 2)
「独身生活楽しんでる?」
「いや、なんかもう可哀想って言われるのにも飽きてきちゃって…」
「ああ、それわかる。あと、浮気される方にも問題がある、みたいな言い方されると、腹が立つよね。それ、指摘してくれなくてもいいから、って言いたくなる」
食事はお勧めのコースを頼み、光輝さんがちゃんと食べているのを見て、少し安心する。
作った料理を届けてあげたいと思って、何度踏み止まったかわからない。
パート先の大学生のこともあるので、やましいことがなくても離婚が成立するまでは、光輝さんには絶対に会わないと決めていたからだ。
食事を楽しみながらお酒も進み、心置きなく毒を吐き合って、笑い合う。
でも、何かが足りないような気がして、光輝さんの横顔をぼんやりと見つめていた。
細身で背の高い、優し気な顔立ちの眼鏡男子で、大手メーカーの技術職。
超優良物件なのに、なぜ不倫されてしまうのか?
「…世の中、間違ってますよね。光輝さんみたいな素敵な旦那さんを裏切る妻がいるなんて」
「それを言うなら、朋美さんの旦那だって…」
不意に肩を抱かれ、光輝さんの頬が私の頬に触れる。
その感触に、心が溶けた。
こんなふうに触れられたのは、いつのことかも思い出せない。
「もう、別れた相手のことを話すのはやめよう。今日は、朋美さんを誘う気で来たんだけど、だめかな?」
「そんなこと言われたら本気にしちゃうけど、いいの?」
唇が触れ合い、チュッと軽く吸われ、舌を差し入れられる。
両腕で抱き締められ、互いの唇を貪るように舌を絡ませると、長い憎しみ合いに乾き切ってささくれだった心が、潤されていく。
「出ようか」
私たちは店を出た。
*****
光輝さんに肩を抱かれて夜の繁華街を抜け、ラブホ街に向かう。
週末なので、どこも満室で、やっとのことで空室のサインを見つけた。
自動ドアを抜け、部屋のパネルを見ると、2室の空室のうち、1室はパーティールームだった。
普通の部屋を選んでボタンを押すと、私たちのすぐ後に入ってきたカップルの小柄な女性が、光輝さんの肩をバシッと叩く。
「…松原さん!?」
男のほうと目が合った。
うわっ紺野さんだ。
よりによってこんなところで会っちゃうなんて。
にっこりと笑って、Vサインを私に向ける紺野さんに目だけで会釈し、逃げるように背を向けた。
鍵を受け取り、エレベーターに乗る。
扉が閉まるのも待たずに、抱き締められて、胸の鼓動がシンクロする。
どちらからともなく唇を重ね、舌を吸い合って、もつれ合うようにエレベーターを降り、部屋のドアを開ける。
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