全部、淫鬱な雨のせい (Page 2)

思い返せば、あの日も雨だった。

診察台に寝そべる彼から、マリン系の香水と湿ったコンクリートの匂いがした。

「最近、天気予報外れるね」

怜が私を見上げて言った。

「そうね。今日も急に降ってきちゃったし」

「仁美さん、傘は?」

「車だから平気よ」

「いいなぁ。俺は原付だから家に着く頃にはきっと全身ずぶ濡れだろうな」

「怜くん、風邪ひかないでね」

窓を叩く雨音が診察室に流れるオルゴールをかき消す。

私は怜の肩にケープをかけた。

セーターの弾かれた雨粒が、紙製のケープに楕円形のシミを作った。

「ぁっ…」

私は思わず凝視した。

薄水色のケープに、雨染みがじんわりと広がっていく。

まるでショーツに愛液が滲み出ているようで、下腹部がきゅっと鳴った。

「…仁美さん」

ギィっと診察台がキシむ音がした。

はっと我に返る。

上体を起こした怜が私を見つめていた。

「乗せて」

「…私の車に?」

「そう。原付は置いて帰るから」

「盗まれちゃうかもよ?大丈夫?」

怜は少し肩をすくめると、

「別に構わないよ」

と笑った。それから、

「このチャンス逃す方がもったいない」

と甘えるように首を傾けた。

心を許してしまいたくなるようなあどけなさと、体を委ねてしまいたくなるような男らしさが混在する二十歳。

その限定的な美しさには人を惑わせる力がある。

しかも私のような年上女の誘い方を、怜は熟知しているようだった。

見えない糸で手繰り寄せられるように、私は彼に顔を近づけた。

怜はフッと口角を上げると、私にキスをした。

頬に添えられた手は、雨で少し冷えていた。

その夜、私たちはホテルで体を重ねた。

期待値をはるかに上回るセックスだった。

”若い年下男より経験値の高いオジサマの方が良い”という記事を女性誌のセックス特集で読んだことが、今なら真っ向から否定できる。

テクニックは決して年齢に比例するものではないし、悪戯に経験を重ねて磨かれるでもない。

これもある種の才能なのだろう。

私は身をもって知った。

公開日:

感想・レビュー

レビューはまだありません。最初のレビューを書いてみませんか?

レビューを書く

カテゴリー

月間ランキング

  1. 服従エッチ。尽くし癖で振られた私にピッタリな相手は、憧れの上司でした。

    ずっこちゃん71500Views

  2. 仕事中なのに…イケメン営業マンの同僚に密室で弄られ、イカされる私

    タコうさぎ58600Views

  3. 普通のマッサージ店だと思ったら性感帯マッサージだった

    川海月41700Views

  4. 密室と目隠し~憧れの彼にハメられたお話~

    ずっこちゃん29300Views

  5. オモチャで自分を慰めていたOLが、同じアパートのチャラ男にめちゃくちゃにされちゃう話。

    ずっこちゃん26000Views

  6. 吐息が響く準備室、抗えない指先

    蒼井夜白21600Views

  7. 大学にOBとして来た彼のにおいに、うずく下半身。ある夜、街中で見かけた彼に、声をかけたらホテルに連れていかれ…

    渚月乃19900Views

  8. えっちなメイド喫茶で、ご主人様にとろとろにさせられちゃう話

    ユキヤナギ19900Views

  9. 年下の可愛らしいアルバイト君は年上の私に遠慮しない

    mitarashi.nya16500Views

  10. 推しの関西弁裏垢男子に知らないうちに洗脳されて脳イキしまっくっちゃう私

    ずっこちゃん15400Views

人気のタグ

クリトリス クンニ 愛のあるSEX ちょっと強引に キス 我慢できなくて 愛撫 乳首 クリ責め 指挿れ 思わぬ展開 乳首責め ラブラブ イキっぱなし 働く女性 彼氏 ベッド以外 胸きゅん 潮吹き いじわる フェラ 中出し 言葉責め 好きな人 OL 年下クン 年上の男性 スリル ちょっと過激に 挿入なし

すべてのタグを見る