あなたの声が大好きだから (Page 3)
目隠しをされたのは、あるホテルだった。すばると顔を会わせることがないよう、2人で別にチェックインする必要があったため、一緒に入らなければならないラブホテルは駄目だった。先にすばるがホテルにチェックインし、その後にレナが部屋に入った。そして、約束をしていた目隠しをちゃんとした。
「随分と、念入りだよね。すばるっぽい。良かった、すばるが実在してくれて。嬉しいよ」
「不安にもなるよ。レナは綺麗だし、俺としては余計に顔を見せたくなくなる」
「綺麗なんて…職場では喪女って言われてるんだよ」
すばるは、レナの目隠しをちゃんと結べているか確認をしてくる。
(喪女の先輩だもんなー)
スキンケア商品を扱う会社だからか、レナの周りには垢抜けた先輩や同期ばかりだ。化粧っ気のないレナは周りから嘲りの対象となり、未経験のない喪女とからかわれる。すばるに泣きながら電話してしまったほどだ。
そして彼は、この機会をくれたのだ。
「綺麗だから周りにやっかまれるだけだよ。本当なら、俺なんかでいいのかって話で…本当に俺が貰っていいの?」
「…いいよ。すばるだから、いいの」
頭の上に、ぽんと手を置かれた。ああ、こんなにも優しい人でよかった。リアルでは初めて会ったのに、初めて会った気がしない。すばるの優しさはアプリのボイスチャットを通し、よく知っている。
2回目のキスは、レナから望んでしたように思える。レナから顔は見えないけれど、顔をつい突き出してしまった。触れる唇は心地よくて、熱い舌を絡めることに躊躇はない。
「んっ」
「好きだよ、レナ」
ベッドに押し倒され、キスを貪られる。身体をくっつかせることでわかったのは、すばるの身体が細身であることだ。痩せているというのは本当らしい。見えない中でもわかるのは、彼がいかに優しく抱こうとしてくれるかだ。決して自分を怖がらせないよう、膝をついてのしかかりすぎないようにしてくれている。啄むようなキスも、きっと優しさからだろう。
「あっ」
「嫌だったら、言って。俺、態度じゃわかんないから」
「う、ぅん。いやじゃな…あんっ」
胸を触れられ、つい体がこわばる。これからの行為への期待と不安が入り交じる。
「すばる…喋って…お願い」
「う、うん。綺麗だよ…」
低く掠れる声は、欲望の色がはらむように熱っぽい。荒い吐息まじりのキスに、レナの下腹部はきゅんきゅんと弾んでいく。
(綺麗なんて…言われたことない)
服を彼によって脱がされていく中で、慈しむように愛撫される心地よさ。自分の肌に浸透していく気持ちよさに、レナの体はのけぞる。恥ずかしい声を発することも、段々と抵抗感がなくなっていく。
「あっ…ん…!」
突起した乳首を吸われた時、つい体に力が入る。1つの胸の突起を舐められ、彼の熱い口の中で転がされると、たまらない気持ちになる。もう1つの胸の突起も指先で弾かれ、いじられ、2つの胸に快感が伝わっていく。
それは視覚を奪われているから、余計だった。
見えていれば彼の愛撫の順序がわかったろう。突然襲い来る刺激に、レナの身体は敏感に反応してしまう。
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