彼とマンガ喫茶へ泊まることに。すると、隣の部屋から喘ぎ声が聞こえてきて…
大雨で電車が止まって帰れなくなってしまい、急遽彼氏とマンガ喫茶に泊まることになってしまった!シャワーを浴びて二人で抱き合って寝ようとすると、隣の部屋からカップルの喘ぎ声が聞こえてきた。ドキドキしている私に、彼が…
私が通っているデザイン系の専門学校は、夏休み中に開催するオープンキャンパスにとても力を入れている。
文化祭と見紛うほど立派な展示作品をいくつも置き、高いクオリティの作品を作る学生がいることをアピールするのだ。
実際に卒業生には有名になった人が何人もいて、講演会なども度々開かれる。
私と、お付き合いをしている昴(こう)くんも展示する作品を作る担当になってしまい、毎日遅くまで学校に残っていた。
「萌香(もえか)、お疲れ」
昴くんに後ろから声をかけられて振り向くと、彼はスポーツドリンクのペットボトルをこちらに差し出して微笑んだ。
「ありがとう。昴くんは、終わった?」
「とりあえず今日の分はな。後は、家に持って帰って作業しなくちゃ」
「だよね。私もなんだ」
「じゃあ、今日は帰るか」
ほとんど生徒の残っていない学校を出ると、まるで滝のような雨が降っていた。
彼と一つの傘に入って駅まで向かうと、電光掲示板には電車がすべて止まっている旨が掲示され、タクシープールは長蛇の列となっていた。
「これは、帰れなくなったな」
「うん…」
私は一気に不安になり、昴くんの腕を掴む。
彼は私を安心させるように肩を抱き寄せてくれた。
「仕方ない。今日は一緒にマンガ喫茶に泊まろうか。あそこなら、シャワーもある」
「そうだね」
互いの親に連絡してマンガ喫茶へ向かうと、ちょうどカップルシートが一つだけ空いていた。
私たちはそれぞれ温度調節の利かないぬるいシャワーを使用したあと、シートの出入り口に毛布をかけて外から見えないようにした。
他のフロアも満席だと聞いていたが、キーボードを叩く音やたくさんのマンガをどさっと置くような音が時々聞こえた。
「やっと、一息つけるな」
「うん。…みんな、帰れない人ばかりなのかな」
「そうかもな。ここにいれば雨の音は聞こえないけど、すごい量が降っていたしな」
しばらくはドリンクバーのジュースを飲んだり、備え付けのパソコンでテレビを観たりしていたが、そのうち眠気が襲ってきてどちらからともなく横になった。
シートはとても硬かったけれど、眠れないほどではない。
「おやすみ」
そういって昴くんが私にキスをする。
そのまま抱き合うと、私たちは目を閉じた。
マンガ喫茶は薄暗いけれど、完全な暗闇にはならない。でも、苦ではなかった。
「ぁん…」
うとうとしかけた頃、どこからともなく声が聞こえた気がした。
気のせいかと思って目を閉じるが、「あ…あっ…」と苦しそうな声がする。
「何の音…?」
私は怪訝な声で昴くんの耳元で囁くと、「どこかで、してるかも」と彼は答えた。
良かったです。
匿名 さん 2020年5月17日