コスプレ女とカメラ男のちょっとした邂逅 (Page 2)
そこまで言われてさすがに思い出した。Kはナイトワークの人のパネル写真撮影に使われることがあり、陽菜もメイク担当として何度かお邪魔したことがある。そういわれてみれば、カメラマンの後ろで機材を設置したりしていたのは彼だったような覚えがある。
「だ、大丈夫ですよ!誰かに言いふらしたりしませんから!」
固まってしまった陽菜を前に枢木は慌てて釈明する。
「そ、それなら良かったです…でもまさか、誰かに気づかれるなんて」
「いえ、顔だけ見たら分かりませんでしたよ!声とか、歩き方とか、他のところで気づいたので。それにしてもよく作りこんでますね」
枢木はしげしげと陽菜の顔を眺めている。陽菜は恥ずかしくなって目を逸らしながら答える。けれど何となく、正体を見破られたのが嬉しくもあった。
「ありがとうございます。仕事だとこんなことできないので、もう趣味の域です」
「ああ、分かります。仕事じゃできないことって、ありますよね。俺もそうです」
枢木は大げさに頷いてみせた。
「今日はもう撤収するところなんですか?」
「そうなんです。メイクも一度落とすか直すかしたいですし」
「そうなんですか。この後ってお時間あります?」
「ええ、まぁ。特に予定はありませんけど」
「よかったらその姿の写真撮らせてもらえませんか?スタジオ借りて」
枢木の熱意に圧倒されながらも、陽菜の胸は高鳴っていた。イベントで高揚していた気分に更に、期待感と興奮が押し寄せてくる。
「じゃあ、ぜひ…」
陽菜は思わず頷いていた。
*****
枢木が借りたレンタルスタジオはちょっとした記念撮影やコスプレ写真などを撮るのに丁度よい、少し狭いがお手頃なところだった。部屋の中にはロココ調の小物から和風モダンな背景スクリーンまで色々と揃っている。
枢木はやたらと歯車の飾りのついた、スチームパンク風の椅子を取り出すと陽菜をそこに座らせた。
「僕は撮りたい風に撮りますし、あなたは撮られたいようにしててください」
曖昧な指示を受ける。枢木は柔らかい色合いの照明をつけると身を屈めた。手持ちのカメラにストロボを装着している。
パシャッ!
フラッシュが焚かれると同時にシャッター音が響く。
パシャッ!パシャッ!パシャッ!
何度も響く音に陽菜の背中はゾクリと震え、片脚を高く上げて脚を組み、目線を外した。こうするとショーツの端についた飾り紐が見えるはずだ。
シャッター音が鳴るたびに身体の奥底に熱がこもり始める。
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