真夏の夜に溺れたい

・作

友達にドタキャンされ、仕方なく一人で沖縄に旅行に来た女子大生の天音。初めての土地で道に迷ってたところを、地元民の都築がガイドを買って出てくれた。年上の余裕を感じてドキドキが止まらない。旅先という開放的な雰囲気の中、年上の男性と刺激的な夜。

折角の夏休み、大学の夏休みは長いから友達と旅行の予定を立てた。夏なら南の島に行きたいよねという安直な理由で沖縄県。

国内なのは予算の関係だ。そう、友達と二人。女同士楽しく面白い旅行になるはずだった。なのに、何で私は一人那覇空港に立っているんだろうか。

「ごめんね、風邪ひいちゃって。ホント、ごめん」

ゲホゴホ咳をしながら、友達が電話を掛けてきた。よりにもよって旅行の前日だった。友達のキャンセル料はともかく、自分のキャンセル料はさすがにもったいなかった。しかし、一人旅とか。いかにも失恋して傷心旅行に来た女みたいじゃない?私の自意識過剰?もうこの際仕方ない、一人でも思いっきりエンジョイしよう。この旅行に備えて買った、旅行雑誌を片手に歩き出した。

*****

ここは一体どこだ?旅行雑誌の地図を見る。確かにちゃんとこの通りに歩いてきたはずなのに、広がるのは写真とは全く違う風景。頼みのスマホはモバイルバッテリーで充電中。

「うーん、地図の見方が違うのかな…。こうか?」

見知らぬ土地で一人、心細い。額の汗をぬぐいながらふらふらと歩き始める。疲れた。休みたい、でもどこで。どこかも分からない海岸でへたり込む。本当にここはどこだ?ホテルへの道も分からない。ただ青い海を見ていると影が差した。

「お嬢ちゃん、具合でも悪いの?旅行客かな。ホテルの名前は言える?」

「道に迷っちゃって。荷物重いし、ここがどこかもわからないし、一人で心細くて…」

急に声をかけられて、見ず知らずの人相手に泣きそうだった。というか、もう半分くらい泣いていた。ぐすぐすいう私に困った顔をして、自販でミネラルウォーターを買ってくれた。そのミネラルウォーターを半分くらい飲んだところで、やっと私は落ち着いた。

「ミネラルウォーターありがとうございます。急に取り乱してすみませんでした。ホテルの名前は分かりますが、道が分からないので教えてください。お願いします」

「それは構わないんだけど、なに、いわゆる傷心旅行ってやつ?いいね、若いって」

「いえ、友達と二人で来るはずだったんですけど、友達が直前に風邪ひいて。キャンセル料が勿体無いから来ただけです」

その言葉にぽかんとした顔をしていた。絶対にそんな理由で一人で来て、道に迷った馬鹿な女だと思われてる。いたたまれない。

「そーなんだー。傷心旅行ならつけ込んじゃおうかなと思ったんだけど。俺は都築っていうんだけど、俺でよかったら案内しようか?こんなオジサンでよければだけど」

「いいんですか?お願いします!」

「任せな、最高の旅行にしてあげる」

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