世話の焼ける後輩くんと自宅で

・作

私の職場の後輩、拓実くんは仕事のポカが多い男の子。愛想と顔はいいからやっていけてるものの…。ある日彼のやらかしの後始末に付き合って終電を逃してしまったから車通勤の拓実くんに自宅まで送ってもらった私は、眠いふりをして彼を部屋に上げ…

「せんぱい、寝ちゃいましたか?」

甘い、若い男の声が、助手席の私に話しかけてくる。寝てはいない、寝たふり。何せ疲れてるんだもん。

この男の子、拓実くんは私の補助につけられた社員で…私は役職はないけど、実質のところ部下みたいな子だ。彼氏いない歴もそろそろ3年になって、忙しすぎて仕事が恋人状態の私にある日やたらと顔の良い若い男の子が補助としてつけられて、これで楽になる!って期待したんだけど、この子がまぁ、仕事ができない。

愛想は良いから取引先からのウケは良いのだけど、報告書を書かせれば誤字脱字、プレゼンの資料を消してしまう、という感じのミスを頻発してしまうからその度に残業して尻拭いするハメになる。今日もそう。それで終電を逃しちゃったから、車通勤の拓実くんに送ってもらってる。面倒なことも多いけど、彼のことは嫌いじゃない。顔が良いのもそうだけど、入れてくれるコーヒーや紅茶もどういう訳かとてもおいしい。

「先輩、教えてもらったマンションの前まで来ましたよ」

「んー?」

寝ぼけたふり、続行中。助手席から薄目を開けて拓実くんの横顔を眺めてるのも、悪くなかったんだけどな。シャープな顎のラインと夜の灯りに照らされて影を作るまつ毛がとても綺麗だから。

「こんな時間まで付き合わせて、本当に悪かったと思ってるんです。部屋まで送るんで、部屋番教えてもらえますか?」

拓実くんが車を止めて、シートベルトを外しながら聞いてくる。

「うん…801…」

「了解です!」

拓実くんは一旦車を降りて、助手席まで回ってきた。

「立てます?肩貸します?」

「肩、借りて良いかなぁ」

「もちろん。了解です」

拓実くんに支えられながら立ち上がると、彼の胸元でふわりと香水の良い香りが鼻腔をくすぐってくる。ずっと男日照りだった私は久々の感触にもう胸がドキドキしてた。その手のぬくもりが、触れているところからじんわりとした熱が伝わってきた。気持ち良いけど、なんだかむずがゆくて身をよじりたくなるような。

「よいしょっと…お姫様抱っこの方が良かったですか?」

「なに言ってるの、このままでいいよー」

そんな軽口を叩き合いつつ、エレベーターに乗り込んで部屋の階へ上がっていく。

「鍵、どこですか?」

「え、うん、コートのポケットだよ」

「えーと」

拓実くんは少し身をかがめると、その手が私のコートの中をごそごそと探り始めた。ふわふわとした髪が鼻の前をくすぐり、シャンプーなのかコロンなのか、すごく爽やかな匂いが漂ってきた。同時に鍵を探す指先が布ごしに私の腰をくすぐるようで、私はなんだか変な気分になってしまう。

「あった!」

「あ、ありがと」

部屋の前まで着くと、その鍵で拓実くんがドアを開けた。

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