イケメン社長はシンデレラバストがお好き (Page 2)

「びっくりしたかな? こういう商品って、デザイン重視で品質は二の次とかも結構あるんだけど、友人のブランドは品質にもこだわってるんだ」
「そ、そうなんですね…」
「それから、どうしてもエロやセクシーを追求するせいか、胸の大きな女性が対象になることが多くてね。友人はそのイメージも変えたいと言っている」

この手の下着を身につけた経験はないが、伊勢崎社長の話は何となくわかる気がした。安価なものは本当にペラペラの生地で、肌馴染みも悪そうな印象。しかし高級感を追求すれば自ずと品も出てしまい、エロさが失われてしまう側面もあるのかもしれない。

「それで、佐倉さんにモデルをお願いできないかと思って…」
「えっと…その…お仕事の依頼でしたら、申し訳ありませんが、事務所の方に」
「正式な撮影の前に、まずは試着だけでも。とりあえず、僕個人に見せてもらう程度で構わない。もちろん、報酬はきちんと払うよ」

そう言って伊勢崎社長が提示した金額を見て、私の心は思わず揺れ動いてしまった。相場の軽く3倍以上、それも単なる試着だけだというのならあまりに現実離れした仕事だ。

「あの…少し、考えさせてください」
「返事は明後日までにお願いしたいな。あ、これは事務所にはオフレコでね…もし受けてもらえるなら、うちのブランドでの起用も継続すると約束するよ」

これはつまり『枕営業』の打診というやつだろう。セクシーなランジェリーを試着した姿を見せるだけで終わるなんて、大人の世界ではありえない話。控え室をあとにした私の脳内には、様々な気持ちが飛び交っていた。

「お待たせしました。迎えが遅くなって申し訳ありません」

複雑な胸中のままに、マネージャー社員の運転する車で帰路につく。車中では特に何も話さず、それでもずっと社長からの依頼について考え、迷い続けていた。

「これ、本日の分です。今後のスケジュールはまた追って連絡しますので」
「お疲れさまでした」

そんな私の背を押したのは、今日の報酬が入った茶封筒。今どき手渡しというのもさることながら、中身の少なさに私の口からは思わず溜息が漏れてしまった。売れっ子になるのは、ほんの一握りの中のさらに上澄み。そんなことはわかっていたが、モデル業だけでは生活にゆとりなど持てなかった。

「あの…本日お話いただいた件ですが…」

自室に帰り着くなり、伊勢崎社長から伝えられた連絡先へ電話をかけた。私の心に、もう迷いの文字は一切なくなっていた。

*****

「どう、でしょうか…?」
「いいね、すごく似合ってるよ」

翌週、私は伊勢崎社長と都内のシティホテルの一室にいた。シャワーを浴びてメイクや髪型を自前で整え、用意されたランジェリーに着替えていく。もちろん今夜のことは、事務所や他のモデル仲間には秘密である。

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