ただ今は愛されたい (Page 4)

まさか海人が私のことを好きだったなんて…。

本当に彼の気持ちを知らなかった?

いや…。

本当は気付いていた。

でも私は海人との関係を壊したくなくてずっと気付かないフリをしていたのだ。

「なぁ…俺じゃだめ?」

「え?」

「俺、藍花のことが忘れられなくてあれからずっと彼女も作ってないんだ。あんな奴なんかやめて、俺にしとけばいいのに」

海人の手は、テーブルに置いていた私の左手に近付いてきて、そっと手を握られる。

ドクンドクン…

私の鼓動は早くなり、全身は熱を帯びたように熱い。

気を緩めると、真剣に見つめてくる海人の瞳に吸い込まれそうになってしまう…。

このまま手を振り払い、帰るべきか。

それともこのまま彼の手を握り返すか。

奏太のことを今でも愛しているなら帰るべきだということは分かっている。

でも…。

私は一途にずっと自分のことを思ってくれていた人が居ると分かったことにより、また女として価値が戻ってきたような気がしたのだ。

誰かに必要とされたい。

愛されたい。

その気持ちが私の体を動かして、海人の手を強く握り返した。

「え?これってそういうこと?俺を選んでくれるの?」

「うん…」

「でもこの手を離したら、またお前を誰かに奪われそうで怖い」

「離さないよ。私はもう海人のものだから好きにしていいよ…」

その瞬間、海人は手を繋いだまま勢いよく立ち上がった。

そして流れるように会計を済ませて、店の外へ出る。

「どこ行くの?」

「好きにしていいって言ったでしょ。今から俺の家に行こう」

*****

30分前まで居酒屋で飲んでいたはずなのに…。

私は海人の家まで来てしまっていた。

「と、とりあえずシャワー浴びてもいい?」

「だめ。今すぐにでも抱きたい」

「焦らなくても…」

「だって何年も待ってたんだぞ?やっと俺の元に来てくれたのに待てるわけない…」

海人はそのままキスをしてきた。

彼は私の緊張や警戒心を解すように、そして私と呼吸を合わせるかのようにゆっくりと舌を動かす。

こんなに優しくて、愛を感じるキスなんていつぶりだろう…。

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