ただ今は愛されたい (Page 3)
「大丈夫だよ!また今度みんなで集まろう?今日はとりあえず子供ちゃんを優先してあげて!」
「うん…。今度こそは集まろうね!海人にもよろしく伝えててもらえるかな?じゃあ、またね…!」
そう言うと真姫は慌ただしく電話を切ったのだった。
私が再びカバンにスマホを仕舞おうとした時…。
海人が少し遠くから歩いてくるのが見えた。
その顔は今日を待ち遠しく思っていたのかなんだか嬉しそうに見える。
「あ!藍花!お待たせ!」
「海人!久しぶり!会って早速で申し訳ないんだけど、奏太は今日仕事で来れなくて…。真姫からもさっき電話があって来れなくなったって…」
「まじか…。実は洋介も上司に捕まって来れなくなったって連絡来たんだよ…」
「え!?私達以外、誰も来ないの?」
「そういう事になるな…」
「せっかく楽しみにしてたのに…」
「おいおい!そんなこと言うなよ!俺がいるだろ!こうなったら開き直って俺と飲みに行こうぜ!」
海人はショックを受けている私を励ますように肩に腕を回してくる。
そしてそのまま明かりのある方へ引っ張っていく…。
確かに海人とも久しぶりだから、話したいことはたくさんある。
私はそのまま海人と2人で居酒屋へ行くことにした。
「乾杯!」
こうやって海人と会うのも何年ぶりだろうか。
数年ぶりに会う海人は大学生の頃と全然変わっていないように見えて、少し羨ましく感じる。
話し方や、くしゃっと笑う顔も何も変わらない。
奏太はあんなにも変わってしまったのに…。
海人の変わらない様子になぜだか安心感を抱いた。
「奏太とは上手くいってる?」
「…いいや。もうすぐ別れるかも」
その瞬間、海人は驚いた顔をしたが、それ以上は何も突っ込んでこなかった。
海人なりに気を利かせてくれたのだろう。
しかし私は誰かにずっと聞いて欲しかった悩みや愚痴をお酒のせいにして吐き出し始めてしまった。
「昔の奏太とは全然違う。好意なんて感じないよ。愛の言葉もなければ、セックスもしない。女としても終わっている感じ 」
「…浮気している可能性は?」
「わかんない。仕事は忙しいみたいだけど、浮気してるか探ろうとさえ思えない…」
「そっか…。せっかく俺が手を引いたのに。何してんだよ、あいつは」
「え?手を引いたって?」
「俺、大学生の時、藍花のことが好きだったんだよ。でもあいつからもお前のことが好きだって聞いて…。2人は両思いだって傍から見て分かってたから…」
海人の頬はほんのりと赤みを帯びていた。
その赤らんだ顔はお酒のせいかと思ったが、耳たぶも赤くなっていることから、恐らく恥ずかしさでそうなっているのだろう。
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