政略婚の彼と昔。

・作

嫌々ながら政略結婚の宴に参加する千愛子(ちえこ)。お守りを固く握りしめながら、遠い過去を思い出していた。お守りをくれた男の子のことが好きだったのだ。気まずい雰囲気のまま初夜に挑むが、実は彼がその男の子だったと知って?!初めてのセックスなのに濡れっぱなしイキっぱなしの快楽地獄!?

千愛子(ちえこ)の手は右ポケットの中で“お守り”を握りしめていた。

「千愛子、ほら、これも飲め飲め」

顔が真っ赤で、ひょっとこみたいな顔になった叔父がお猪口になみなみと注がれた酒を勧めてくる。

嫌々受け取り、口をつけたふりをする。

――もうやだ…もっと自由に生きたい。

あの人のように。

今夜は結婚が決まった私たちのための宴が開かれていた。

隣にはこれから夫になる男性が同じく酒を勧められている。

ユウヤというらしい。

3つほど隣の村にある大地主様のご子息だ。

わたしは政略結婚のために、見ず知らずの男性と婚姻関係を結ばされた。

2021年、現代とは思えないほど古くて、小さくて、閉ざされたこの村。

ここでは、いまだにこうやって政略結婚が執り行われている。

会場内の人たちが出来上がっている中、数名がコソコソと話し合っているのが見えた。

――そろそろか…。

話し合っていた男性と目が合い、気まずくなる。

そう、おそらくこれから「初夜」が待っている。

*****

会場の声が聞こえなくなるくらい遠い、離れに案内された。

「では、ごゆっくり」

案内人は去り、一気に静かになってしまう。

夏虫の声だけが響いている。

――超気まずいけど…これ、わたしから話しかけるべきなの???

もぞもぞと居心地悪くしていると、ユウヤが口を開いた。

「ごめんね、こんな急に結婚なんて」

凛々しい見た目とは裏腹に、優しく染み入るような声が心地いい。

「いっ、いや…確かに急ではあるけど、この村で育ったら仕方ないっていうか…」

「俺、千愛子さんのこと大切にします」

じっと目を合わせてきた彼に、緊張のあまりついそっぽを向いてしまう。

すると、ぎゅっと体を抱き寄せられて彼の胸元にすっぽり収まった。

「やっ…やめて!」

恥ずかしさと緊張でジタバタするが、すぐに抑え込まれてしまう。

男性に抱きしめられたのは初めてのことだった。

一気に鼓動が早まり、顔が熱くなる。

「わたし、男性とこういう感じになるのが初めてで、緊張しちゃって」

安心して、とユウヤに頭をぽんぽんと撫でられる。

しばらく抱き合っていると、ひょいと抱きかかえられ、布団の上に下ろされてしまう。

仰向けにされたわたしの唇に彼の唇が重なる。

柔らかくて、熱っぽくて、なんだか体の下の方がジリジリと疼いた。

キスをしながら、ゆっくりと服を脱がされる。

彼にされるがままに。

「優しくするから」

スカートを下ろされかけたその時。

「千愛子さん、これって…」

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