献身~あなたの支えになりたい~

・作

夫が亡くなってから、私はパートをしながら息子の昭(あきら)を養う生活を続けていた。そんな厳しい生活を、隣に暮らすサラリーマンの勇人(ゆうと)君が助けてくれていた。二人で食事をしている夜、彼は私に聞いてくる。「俺は旦那さんの代わりにはなれませんか?」

「おつかれさまです」

今日もパート先の方々に挨拶をし、私は残り物のお総菜などをもらい、家へと駆けていく。

「いつもあの人はほんとに忙しそうね」

「旦那さんが亡くなったのよ」

「若いのに大変ね、あんなにいい人なのに」

*****

私は夫を数年前に亡くしてから、一人で息子の昭を育てる日々を過ごしている。

パートの賃金は決して多くはないが、なんとか人のやさしさに甘えながらも日々の暮らしを送ることができている。

「ただいま、すみません。いつも…」

私が家に帰ると、昭は遊び疲れたのか、すうすうと寝息を立てていた。

「ああ、昭君なら遊び疲れてお休みしてますよ」

「ほんとに、いつもすみません…」

「いえ、僕がやりたくてやってることなので」

「せめて、食事だけでもと思って」

「ありがとうございます。奥さんのところのお惣菜、いつもおいしいですよね」

そう言ってくれるのは勇人君という、隣の家の若いサラリーマンだ。

就職して間もないのに、我が家の話を聞いて昭の面倒を見たり、いろいろな手伝いをしてくれる、心優しい方だ。

私はせめてもの気持ちとして、パート先のお惣菜をお礼として渡している。

それでも足りないくらいだとは思うけれど…。

二人でお惣菜を食べていると、勇人君はふとこんなことを聞いてきた。

「奥さんは一人で辛くないんですか」

「それは…」

言葉に詰まった。

仏壇の方を見れば、もう帰ってこないあの人の写真が飾られている。

「…辛くないと言えば、嘘になりますよね」

本当は、昭にもっと幸せな思いをさせてあげたいし、いろいろなことを体験させてあげたい。

何より、父と母と息子。

3人で時を過ごしたい。

勇人君は、少し無言になった後、私に聞いてきた。

「俺は代わりになれませんか」

言葉が出てこなかった。代わりの誰かのことなんて、考えたことがなかったから。

確かに昭はよく勇人君に懐いている。

二人はよく楽しそうに外で遊んだり、ゲームをしたり。

時々、「パパが帰ってこなくても平気だよ」と言って我慢して留守番もしてくれる。

そんな息子に対する罪悪感は強かった。

それでも、私は新しい恋愛に踏み込めなかった。

あの人のことがどこか心に残っているから。

「お礼、してくれませんか」

彼はスーツとワイシャツを脱ぐと、私を床にそのまま押し倒し、見下ろすような体勢で私をみた。

「好きです」

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