魔王に捧げられた生贄~悪魔の体液は蜜の味~ (Page 4)
あれから何日、いや何ヶ月経っただろう。
私は、ヴァル様の寝室から1歩も出ずに過ごしていた。
何度目かの満月を見た気がするけれども、もう数えるのを辞めてしまった。
「フェリスが子を孕むまで、ここを出す気はない」
との言葉通り、毎日毎晩ヴァル様に弄られ舐られそして愛されている。
時には、日の高いうちから夜が更けるまで。
ヴァル様に抱っこされて全てを済ませたから、1歩も歩かなかった日もあった。
「妊娠したら、毎日ではなくなるんですよね?」
妊娠したら…この甘い日々はもう続かないかもしれない。
日が空いて、飽きられたら?
私以外がヴァル様の愛を受ける日が来たら?
そう考えると気が重くなる。
「大事にはするが、愛を確かめ合う必要はあるだろ」
それってつまり、今と変わらない。
「一生寝室から出られないじゃないですか!」
嬉しさをかみ殺して、恨みがましい目を向けてみる。
相変わらず美しい。
この整った顔は、私だけのもので、私だけを求めている。
その事実だけで、胸が一杯になる。
「出る必要が何処にある?」
当然のようにヴァル様は言った。
広い寝室の隣にはお風呂があり、反対側には書斎もついている。
美味しい食事にヴァル様の淹れてくれるお茶でティータイム。
欲しいものは口に出さなくても、何故かベッドサイドの机に置かれている。
人間界の家に置いて来た、クマのぬいぐるみがあった時には飛びあがって喜んだ。
…出る必要、ないかも?
「私、分かりました。生贄になった人が帰ってこなかった理由」
「魔族の愛を一身に受けるということは、そういうことだ」
今なら、彼女たちの気持ちがわかる。
魔族の体液は甘い蜜。
そしてヴァル様の声は甘い罠。
私の身体は、もうヴァル様なしではいられない。
「ねぇヴァル様」
わざと甘い声を出して首に手を回す。
見つめあうだけで、意識が飛びそうになる。
「フェリス、さっき終わったばかりなのにまたおねだりか」
そう言いながらヴァル様は、飛び切りの笑顔で私を抱きしめてくれた。
Fin.
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