初夜、旦那様はたくさんイカせてくれました
時代は明治。撫子が政略結婚で嫁いだのは、10歳年上の華道の家元。出会ってすぐ祝言をあげ、2人は初夜を迎える。嫁いだのは優しい旦那様だったが「君をたくさん気持ちよくしますね」と愛撫が始まり、撫子は何度もイカされ続ける。
「改めまして…撫子(なでしこ)と、申します。…ふつつか者ですが…よろしくお願いします!」
畳の上に敷かれた布団に、撫子は額をこすりつけた。10畳のうす暗い部屋の中、撫子の向かいには、白い着物の寝間着を着た32歳の男が正座をしている。
「はい、こちらこそ。こんな若い方にお嫁に来てもらって、私は本当に申し訳ないですよ」
高ノ宮久雄(ひさお)は成熟した男性特有の色香をまとう男性だった。涼やかな目、左目の下にある泣きぼくろといい、撫子が嫁ぐ前に見たお見合い写真そのままだ。
「そんな、とんでもない、です!高ノ宮家に嫁げて、私は果報者です!」
「はははっ、そう言ってもらえると嬉しいです。嫁いでくださったからには、大事にしますからね」
久雄が近づこうとした時、撫子はびくりとしてしまった。彼の動きは止まる。
撫子の顔は、赤くなる。旧家の撫子の家と、華道の家元の高ノ宮家の政略結婚。今日まで会うことはなかったが、祝言はもう済んでいる。
だから今夜、初夜を迎える。
「だいじょーぶですよ」
「きゃっ!」
彼は、撫子をとても優しく抱きかかえた。頭をポンポンと撫でると、その髪に口づけを落とされる。
「だいじょーぶ、です」
とても柔らかな口調と、撫子を気遣う抱擁。互いの白い着物同士が擦れ合う衣の音にさえ、撫子はドキドキした。
「だんな様…」
撫子は彼の肩に頭をもたれかける。彼が笑った声がしたと思えば、顎に手をかけられる。
「んっ…」
その口づけは、優しかった。お互いの口を触れ合わせ、感触を確かめ合う。ふにふにしてて、気持ちいい。まるで洋酒入りの西洋菓子を食べている時のように、心地よく酔ってしまいそうだ。
「あっ…ん」
彼の舌が自分の口内に、入ってきた。熱い舌は自分の舌に絡む。自分の反応を細かく確かめながら、彼はキスを続ける。ゆっくりとしたキスは、じわじわと撫子の身体を温めていく。
久雄は、そっと撫子を布団の上に横たえた。撫子はキスをしながら、久雄に両手を握られて息を呑む。
「私は…嫁いでもらったからには、君をとても大事にしたいんです」
「はい…。んっ」
「…だから今夜は、君をたくさん気持ち良くしますね」
キスがこんなに気持ちいいものと知らなかった。与えられる優しいキスにぼんやりしていた撫子は、久雄の言葉を理解していなかった。
『君をたくさん気持ちよくしますね』
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