体育会系イケメン後輩に告白されて襲われました。 (Page 4)
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「…会議室で、こんなこと、しちゃ駄目だからね…」
「…す、すみません…。先輩の涙を見たら止まらなくて…」
ヒナの脱力した声音に、角谷は少し焦りを含めて答える。
そう、ヒナは彼の前で泣いた。
ヒナが心血注いだ競合コンペに負けたことが原因だ。1年も下準備をしてきたプロジェクトだった。彼の前では気丈に「仕方ない」と言ってみせたのだが、「先輩はいつも頑張ってますよ!」という角谷の一言で、張り詰めていた糸が切れたのだ。
そんな彼が突然キスしてきて、あまつさえ愛を囁いてきて…。
かたい会議室の机の上で、ヒナ達は横たわっている。
「ぅ…せ、先輩。しめつけないで下さい。またしたくなってきちゃいます」
「う、うるさいわね…!合意せずにするのも、駄目なんだからね…!」
「すみません…嫌じゃなさそうでしたが、もしかして嫌でしたか?」
彼は、大型犬のようだと思った。大きい図体で、ヒナを見上げてくるのだ。
「俺とは、付き合えないですか?」
…ヒナは、悔しく思う。
彼は、学生の頃から体育会系の部活をしてきたからか、先輩であるヒナに従順だった。
『先輩!』
会社でも「真面目」と敬遠されがちなヒナに、尻尾を振ってついてきて、いつもいつもヒナの傍に引っ付いてきた。
『先輩、嫌がってないですよね?』
彼が事の最中に言った言葉が蘇る。
いつもヒナの隣についてきた図体がでかい彼を、邪魔だとあしらわなかったのはヒナ自身だ。
嗚呼、悔しい。
彼自身に対しても、彼に強引にされて気持ちよくなってしまったことに対しても、そして今自分自身が持っている答えに対しても。
「…駄目、よ?」
「えっ」
駄目だ。
ヒナは彼と繋がった状態のまま、彼の首に腕を回した。
「私以外とは、もうしちゃ…駄目よ?」
それがヒナの持つ、答えだった。
Fin.
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