雇用主は、突然に (Page 6)

「どうして、私の雇用主になろうと思ったんですか…?」

「研修も終えてない新人の子を送り出す風俗店なんて、普通に考えておかしいでしょ。でも、素直で一生懸命で、健気でしょ…あと…」

「あと…?」

「単純に、私のタイプだったから」

「それは…だいぶ軽率な…」

「いいじゃないの、君にしかできない仕事なんだから。私の体を慰めて、私の身の回りの世話をして貰うんだから」

「身の回りの世話まで…!?」

「当たり前でしょう」

事後に体を寄せ合いながらしたピロートークは、まるで今日初めて会ったのを感じさせないような、そんな空気感があった。

今日、この部屋のドアを開けた瞬間は『誰でもいい』と放たれた言葉が、『君にしかできない』になっていること。

それだけで、心の中に温かいものが満ちていくのを感じ、私は彼の胸板に顔を擦り付けた。

Fin.

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