梓京介の自己開発のススメ
誰と身体を重ねても気持ちよくなれず、不感症を疑っていた優実。快感に興味はあるのに感じられないもどかしさが募る日々から脱すべく、身体の開発をしてくれるという男の人に連絡し会ってみると、それから優実の身体は一変する。
「よく、アダルトビデオなんかでローターを挿入して外を歩かせる。みたいなものがあるのはご存知ですか?」
男の人の落ち着いた低音が耳に入る。
火照る身体を慰めるのに必死な私は、そんな梓さんの問い掛けに答えられずにいた。
「あれって実は、ビデオで女優が反応しているほど気持ちのよいものではないんですよ」
梓さんの指先が、私の身体をゆっくりとなぞっていく。ぞくぞくとした快感が背筋を走っていき、思わず達してしまいそうになるのを唇を噛んで堪える。
だってまだ、お許しを得ていない。
「女性器は、主に圧迫する。揺らすことで快感を得ます。だから、あんな小さな無機物ひとつ中に入れて振動していたところで、大した快感は得られないんです。わかりますか?」
そういう梓さんの声は低く甘い。多分、私が先程梓さんの指先で達しかけたことに気付いている。
ゆっくりとディルドを出し入れするごとに鳴る水音。今までの私の身体では考えられないくらいぐっしょり濡れたそこは、定期的に我慢できずに痙攣し、達しかけてしまう。
そうなったら、快感が上り詰めてしまわないよう一度手を止めてなるべく深く呼吸をする。勝手に達したりなんてしたら、梓さんはまた連絡をくれなくなってしまうかもしれない。
「ぁ…っ、はぁ…」
梓さんに開発してもらった身体は、もう梓さんなしではいられない身体になっていた。一人でどれだけ慰めようと、彼の言葉、指先、性器がなければ熱は燻ったまま。苦しいまま。
前に梓さんの指示を守らず、手を止められずにひとりで達してしまった時はひと月連絡が途絶えた。その間私は何度も何度も自分の身体をまさぐり、何度も何度も達したにも関わらず、久し振りに会った梓さんの手で声が出なくなるほど達してしまったのだ。
「誰が勝手に手を止めていいといったんです?」
「ひっ、ぁ…すみませ…でも、手を止めないともう……イっちゃいそうで…」
語気に反して頬を撫でる指先の動きは柔らかい。その僅かな刺激ですら、中に力が入りそのまま達してしまいそうになる。
「優実さんはいい大人なのに確認もできないんですか?」
「それなら、達してもいいかと僕に聞けばいいでしょう?」
私はもう限界だった。
「あ…ずささん…、もう…イってもいいですかぁ…」
リズミカルに奥の熱を叩く。甘い刺激がどんどん強くなって…。
「どうぞ」
「ひ、ぁ……んんっ!」
梓さんの許可が下りるのとほぼ同時に達してしまっていた。もし許可が下りていなかったら、なんてことを考える余裕はなかった。
「…ぁ、う…」
「気持ちよかったですか?」
「はいぃ…きもち、よかったです…」
脱力し絶頂の余韻に浸る。おずおずディルドを引き抜こうとすると、その手は梓さんの手によって遮られた。
「このくらいじゃまだ物足りないんじゃありませんか?」
囁かれた言葉は落ち着き掛けた熱をまた燃え上がらせるのには十分なもの。
私はただ、とろけた眼差しで梓さんを見ることしかできなかった--。
Fin.
小説?
短すぎてなんのことやらさっぱりでした。
さわら さん 2021年4月14日