夫に愛想を尽かされたら同じマンションの青年と関係を持ってしまった件について
夫に愛想を尽かされ、凍えた夫婦関係に悩んでいたところ、ひょんなことから同じマンションの青年の家に上がることに。初めて知り合った相手だからこそ夫の愚痴を吐き出すことができ、彼の優しさに体を許してしまう。先ほどまで優しかった青年が一転、まるで獣のように抱かれてしまい…身も心も食らい尽くされる。
夫から愛想を尽かされたのは気づいていた。
日々悪くなる空気感とセックスレス。
心が繋がっていれば問題ないと思っていたが、触れられ、名前を呼ばれ、求められる行為に愛を感じる自分もいた。
真琴の気が弱いこともあって、夫からの嫌味に言葉を返すこともできず、夜誘う勇気もなく、夫婦間は改善することなどなかった。
「ふう…」
いつものように朝のルーティンをこなす。
キッチンの片付けから掃除機に洗濯物。
もう慣れ親しんだルーティンだって新婚だった頃は二人で分担しようだななんて仲良く話し合っていたものだ。
ゴミを出しおえた真琴は静かに息を吐いた。
とっとと部屋に戻って映画でも見よう。
今日はパートも休みなのだ、夫がいない分存分に休日を楽しんでやろう。
真琴はそう意気込みながらマンションのエレベーターに乗り込み閉めるボタンを押す。
エレベーターのドア閉まりきる、その直後。
「すみませーん! 乗ります!」
ぬっと入ってきた手に驚く間もなく、持っていたカップからコーヒーがこぼれ真琴の胸元を汚した。
「え、あっ…」
「間に合ったー!」
エレベーターへ駆け込み乗車してきたのは二十代くらいの垢抜けた青年だった。
彼は真琴にお礼を言うべくこちらを向くも、胸元にかかったコーヒーを見て慌てて自分の持っていたカップと見比べた。
「え!? あ! すみません!?」
「い、いえ…こ、こちらも不注意で…」
「俺が急に乗ったからですよね!? うわー…どうしよ…え、ほんとすみません!」
青年は勢いよく頭を下げる。
真琴もなぜか慌ててしまいわたわたと手を振った。
「そ、そんなことないです…! 私も貴方が乗ることに気がついていれば…」
「いや、俺さっき来たばっかでしたし!」
「いえ、それでも…」
「いやいや!」
「いえ…」
話の決着がつかないまま、エレベーターが目的地についたことを知らせる。
青年が気まずそうに頭をあげると、あっと声を出した。
「俺ここの階なんでぜひ部屋あがってください!」
「え? いえそれは…」
「どうかこのお詫びをさせてください! お願いします!」
「え、っと…」
「お願いします!」
青年の、本当に申し訳なさそうな顔になんだかこのまま謝らせるのも申し訳なくなってくる。
いくら男性の家といえど、なんのやましいことはないのだ、問題などあるはずがない。
彼の勢いに負け、真琴は渋々了承したのだった。
*****
「えーっと…コーヒーこぼしたときの対処法は…」
家に入って間もなく、青年はスマホで検索しつつキッチンへ向かった。
真琴は小さく「お邪魔します…」と言うと恐る恐る家に足を踏み入れた。
青年を追いかけキッチンへ行くと、ちょうどハンカチを持ってきていた。
「すみません、こんなことになってしまって…今日このあと予定は…」
「ありません…夫もまだ帰ってきませんし…」
「旦那さんいらっしゃるんですね!」
お礼を言いハンカチを受け取る。
コーヒーを被ったところに押し当てるが、あまり効果はない。
裏から石鹸や食器用の中性洗剤のついた布でシミ部分を叩く必要があるが、ここでは無理だろう。
「いいな〜貴方みたいな奥さんいたら旦那さん幸せ間違いなしっしょ!」
青年は話ながら真琴を二人掛けのソファに促す。
軽く頭を下げて椅子に座ると青年は横に座った。
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