バーの優しい常連客に誘拐されて、初めてを奪われちゃいました

・作

大学生の亜子は、生活費を稼ぐためにバーでバイトを始める。そこへ常連客のケントが現れ、紳士的な態度で彼女に近づく。彼の派手な外見や刺青に違和感を覚えながらも、優しさに安心してしまう亜子。しかし、ある夜彼の車に乗ったことで運命が変わる。目覚めると鎖に繋がれ、彼の正体は…!?

バイト初日、私は慣れないバーの空間に戸惑っていた。黒を基調とした洗練された内装、穏やかなBGM、カウンター越しに並ぶリキュールボトルたち。

華やかな世界に、自分だけ場違いな存在のように感じた。

その時だった。背後から聞こえてきた低い声に、私は驚いて振り返った。

「こんばんは、今日は新人さんがいるのかい?」

視線の先には、派手なシャツとジャケットを身にまとった、がっちりした体格の男性。顔立ちは日本人離れしていて、その瞳は青みを帯びている。

マスターがその人を「建設会社の会長さん」と呼んだことで、少し安心したのを覚えている。

「初めまして、アルバイトの亜子です…よろしくお願いします」

ぎこちない自己紹介に、彼はにこりと笑い、手を差し出してきた。

「紳士の挨拶だよ。握手をしよう」

その手を取ると、彼はふっと私を見つめたまま言った。

「小さくて柔らかい手だね。日本の女の子は本当に可愛い」

その言葉に、私は顔を赤らめた。だけど、どこか居心地の悪さを感じたのも事実だ。

派手な服装やブランド物のアクセサリー、さらには腕に見え隠れする刺青…。

どれをとっても、建設会社の会長という肩書きとは少し離れているように思えた。

「なぁに、緊張してるの?僕が怖い?」

その言葉に私はぎこちなく首を振った。すると彼は笑って、「取って食ったりしないよ」と冗談めかして言い、カウンターに腰掛けた。

*****

それから彼は連日、店に訪れるようになった。私がシフトに入る時間帯を狙ったかのように。そして、そのたびに、彼の視線が私を追っているのを感じた。

「亜子ちゃん、今日も綺麗だね」

「頑張りすぎて倒れないようにしないと」

その言葉に、私は毎回、どう返事をすればいいのか分からなかった。ただ、彼の目の奥に優しさを感じてしまう自分がいた。

だけど、彼の腕に見える傷跡や刺青を目にするたびに、心のどこかが警鐘を鳴らしていた。それを無視してしまったのは、彼の笑顔が本当に優しげだったからだ。

*****

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